日本進出を果たしたロシアIT企業
日本からするとロシアは隣国ですが、馴染みの薄い国です。もっとも「遠い隣国」とは言い得て妙ですね。一方で、その日本にロシアのIT企業が進出していることはご存知でしょうか。数は多くないですが、ロシアの情報技術は日本の市場でも確かに求められています。今回は、日本市場に進出したロシアIT企業を紹介します。
日本に進出する海外IT企業
経済産業省の調査によると、2015年、日本に進出している外資系企業数は3,410社。うちアメリカ系企業が855社、欧州系企業が1,484社、中国が335社、その他アジア諸国からの進出企業が540社となっています。残念ながらロシアの項目はありませんが、欧州系企業に含まれる「その他ヨーロッパ」からの進出企業数は83社です。
また、IT企業の進出数は388社で、全体の約10%を占めます。各国別に見ると、進出企業におけるIT企業比率が高い国は、カナダ(28.1%)、インド(20.0%)、その他ヨーロッパ(18.1%)、韓国(16.8%)、アメリカ(15.9%)、中国(15.2%)です。
2015年の新規参入企業数は74社で、そのうち13社がIT企業となっています。
外資系のどういったIT企業が日本に進出しているでしょうか。就職活動サイトのonecareerによると、2017年の人気外資系IT企業は、1位Google、2位Amazon Japan、3位LINE(韓国)、4位Japan IBM、5位Japan Microsoftとなっています。この他にも、セールスフォースやノキア、モトローラ、アジア系ではHuawei、ASUS、また、シャオミが正規代理店を通じて進出しており、大方の大手IT企業はすでに日本市場に進出しています。ちなみに2017年12月現在、Yandex、Mail.ru、RamblerなどのロシアのIT大手企業は日本へは進出していません。
一方で、近年は海外のスタートアップ企業の進出事例も増えています。2013年にはモバイル決済のSquare、Uberが、2014年にはAirbnb、 法人向けクラウドストレージのBoxが、2016年はNetflixが相次いで、ジャパンオフィスを作っています。
日本に進出するロシアIT企業
では、ロシアのIT企業の日本進出はどうでしょうか。以下、大企業からスタートアップまでご紹介したいします。
1. カスペルスキーラボ
2003年にiMEX社と共同でジョイントベンチャーを設立。2006年に、モスクワ大学スラブ言語学科を卒業し、当時の営業統括部長だった川合林太郎氏が代表取締役に就任。2009年からロシア本社の日本法人株式取得が始まり、2011年に100%株式を取得し、完全子会社化。オフィス移転やスタッフの増強、マーケティングやプロモーションの強化を行いました。
2. Dr.Web
CEOであるBoris A. Sharovはモスクワ大学アジアアフリカ諸国学部にて日本語を勉強しており、日本語が堪能です。韓国企業に対し、アンチウイルスエンジンのOEM供給を行い、日本でも大手のソフトウェア販売会社を通して販売されていましたが、こちらは2012年に終了しています。2010年に日本法人を設立し、Dr.Webブランドとして製品の販売・サポートを行なっています。
3. ELSYS
ロシア政府系研究機関であるELSYS社と日本国内における独占ライセンス契約が結ばれ、2015年に日本法人が設立されました。当初は資本金1,000万円で10人の出資者により立ち上げられ、女優の「東てる美」も投資家に名を連ねていることでも有名になりました。がっちりマンデーで取材され、その認知度を高め、2016年のG7サミットでも導入されています。
4. カープライス
ロシアカープライスの大株主であるオスカー・ハルトマンが2015年に市場調査で来日した際、元三井住友銀行でロシア駐在歴のあった、現CEOの梅下直也氏に日本法人の設立を持ちかけたのがきっかけです。ロシア法人と日本法人に直接の資本関係はありませんが、日本法人はオスカー・ハルトマンからの出資を受けています。2016年には三井物産株式会社引受先とする第三者割当増資を実施しており、資本金も5.5億円、従業員も20名から36名となり拡大中です。ちなみに三井物産株式会社はQiwiにも投資をした事で知られています。
上記以外にも、ジャパンオフィスはありませんが、画像加工アプリのPrismaは一時期SNSで大きな話題となりましたし、仮想通貨・ブロックチェーンに携わる人であれば、仮想通貨Etheriumの創業者ヴィタリック・ブテリンがロシア出身であることを知る人は多いと思います。また、ロシア発とは認知されていませんが、ブロックチェーンプラットフォームのWaves platformも知られていると思います。
海外スタートアップを
受け入れる国家戦略特区
とはいえ、まだまだロシアIT企業の日本進出事例は少ないです。ここには、文化的・社会的慣習の違いや、言語ハードル、情報不足による進まない市場理解など、多くの問題があります。これらは次回以降に見ていくとして、今回は、日本進出を考えたときに、現実的にすぐに問題になるビザにフォーカスして、スタートアップビザを提供している自治体を紹介したいと思います。
通常、外国人が日本で起業するために「経営・管理ビザ」を獲得するには、①500万円以上の資本金②常勤2人以上の職員の確保③事務所の開設、といった条件が前提となっています。起業前に日本で別のビザを所有していない場合、トラベルビザ、もしくはビジネスビザで入国してこの条件を揃えなければいけませんが、連絡先がホテルでは、事務所などの契約を結ぶのは難しいでしょう。非常にハードルの高い条件といえます。
2015年に始まった「スタートアップビザ」制度は、この3つの条件を半年間猶予します。半年間で条件をクリアできれば、通常の経営・管理ビザに切り替えることができる仕組みです。国家戦略特区に指定された地域が実行できる規制緩和策でもあります。
申請には、必要書類(申請書、事業計画書、工程表、履歴書、入国後6ヶ月の住居を明らかにする書類、銀行の預金残高証明書など)を原則、申請者本人が自治体に提出する必要があります。申請前に滞在中の住居を決めておかなければならない、提出は原則申請者本人に限るなど、少なくとも申請前に最低一度は渡航する必要がありそうですが、それでもスタートアップビザ制度のない自治体と比べると、格段に創業のハードルは下がります。
以下が、スタートアップビザ制度を提供する自治体です。
1. 仙台市
スタートアップビザ(外国人創業活動促進事業)について|仙台市
仙台市は、日本の北東エリアに位置し、この地域では最大の都市です。人口は108万人。2010年に地震がおきた宮城県の県庁所在地でもあります。震災後、国内外問わず起業支援に力を入れており、起業に関するポータルサイトも準備しています。仙台市ではスタートアップビザ申請にかかる書類は、指定の法律家に委託して提出してもらうことも可能です。
2. 新潟市
新潟市は日本海側北部に位置し、人口は約80万人。1970年代に新潟ーハバロフスクの直行便が開通し、ロシアからの木材輸入、新潟からの中古車輸出で、日ロビジネスの歴史も長い地域です。新潟市では、オフィス賃料をサポートする補助金制度や、会社登記にかかる免税を受けることができます。
3. 東京都
www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp
東京都は日本の首都であり、人口約1,300万人のメガポリスです。東京周辺も含めるとNY都市圏を上回る世界最大の経済規模を有します。多くの日系・外資系会社が本社を構え、また、金融セクターとしては、世界第5位の規模です。外国人の創業を促す制度としては、スタートアップビザ制度以外にも、各種手続きを一元化した起業支援センターや、海外スタートアップ向けのアクセラレータプログラムなど、海外起業家向けに様々な支援プログラムが準備されています。特にアクセラレータプログラムでは、東京に本拠地を構える沢山の大手企業がパートナーとして登録しており、ネットワーキングやマッチングの場としても活用できます。プログラムはFintech、Newtech、Blockchainの3つがあります。
4. 愛知県
愛知県国家戦略特別区域「外国人創業活動促進事業」の実施について - 愛知県
愛知県は日本列島のほぼ中心に位置しており、人口約750万人。トヨタを輩出した県としても有名であり、自動車産業・航空機産業が盛んで、日本の工業の中心地です。愛知県ではスタートアップビザ申請にかかる書類は、指定の法律家に委託して提出してもらうことができます。
5. 今治市
今治市国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業 | 営業戦略課 | 今治市
今治市は内海と太平洋に囲まれた島、四国の中に位置し、人口は約15万人。古くから造船業が盛んで、日本最大の造船会社も本社を置く。近年は、島と本土を結ぶ60kmに及ぶ橋の上をサイクリングできるとあって、国内外から多くのサイクリストが集まっています。
6. 広島県
広島県は今治市と海を挟んで対岸に位置し、人口は約280万人。日本有数の鉄の産出地で、戦時中、日本陸軍と海軍の拠点が置かれたことから、造船業、自動車産業を始めとする工業が発展しました。MAZDAも本社は広島です。広島県は、国内外の著名なベンチャー関係者を招いてのセミナーやハッカソン、大企業とスタートアップとのミートアップなどベンチャー支援に力を入れいます。また、中高生向けプログラミング授業やGoogleとの協力イベントを開催するなどIT人材の育成にも取り組んでいます。広島県ではスタートアップビザ申請にかかる書類は、指定の法律家に委託して提出してもらうことができます。
7. 福岡市
福岡市 国内初「スタートアップビザ(外国人創業活動促進事業)」を始めます
福岡市は日本の南西部に位置し、人口約150万人。古くから外港としての整備が進み、日本の外交・貿易の窓口でした。都市の人口規模・経済規模としては、日本でTOP5に入り、近年は中国や韓国の企業が日本進出の足がかりとして、福岡市へ進出する例も多く見られます。第三次産業は市内総生産額の約95%を占めており、商業・サービス業が中心の都市です。有名なゲーム会社レベルファイブも本社を置くことで知られています。福岡市はスタートアップビザ制度で最も成功している都市として知られています。その理由は、官民の連携です。受付窓口はスタートアップカフェとして、民間の書店の一角を借りて運営されており、日英バイリンガルと起業に詳しい専門家が常に2名常駐しています。そこでは会社登記や許認可申請を手伝ってくれる法律家や弁護士、会計士、オフィスを仲介する不動産業者などを紹介してもらえます。福岡市では、これらのサポートに加え、住居、オフィス、それぞれの賃料補助を受ける補助金制度が準備されています。
今回の記事は元々はロシアのスタートアップ企業向けに作ったものですが、日本人も知らないスタートアップビザ制度などについても調べる事ができたので、日本語版を載せておきます。それにしても、ロシア企業の進出事例はまだまだ少ないです。
ロシアにおける特許出願状況
一年間の特許出願数でも中国が日本を追い越しそうになっています。特許はロシア語で、Патент(日:パテント)と言いますが、気になったのでWIPO(世界知的所有権機関)の統計でロシアの特許出願状況を調べてみました。
特許出願数は1位はダントツ中国、ロシアはトップ10入り
2016年までに、ロシアで特許出願されたのは41,587件。そのうち、約35%は海外からの国際特許出願なので、ロシア居住者によるロシア国内向けの特許出願数は、約3万件強です。2015〜2016年にかけて、ロシアでの特許申請数は-8.6%となり、ロシア居住者による特許出願数の減少が理由としては挙げられています。
出典:WIPO
ロシアの特許出願数は、1995年と比べて着実に伸びてはきていますが、中国(約70倍)や、イラン(約40倍)と比べると、出願数が大きく伸びているとは言い難い状況です。これは、ロシアにおける知的財産権に対する認識や、知財戦略への動機付けがまだまだできていないからだと言われています。
ちなみに、日本は2005年頃から毎年の特許出願数は減少の一途を辿っています。
出典:WIPO
一方で、ロシアと日本は世界的にみて、特許取得比率が高いのが特徴です。ロシアでは、特許出願数と特許審査官の数のバランスがよく(欧州オフィスや韓国も同様)、特許審査において特許出願から審査結果が出るまでの期間の短縮に成功しています(平均して10.3ヵ月。特許出願数TOP10の国々においては最短。)。
出典:WIPO
ロシアにおける特許出願数と特許審査人の推移
出典:WIPO
ただ、裏を返せば、取得率が高く、審査結果までの期間が短いにも関わらず、特許申請数が伸びないのは、やはりそこに価値を見出している人が少ないからと言えるでしょう。
ロシアでは特許権を持っていたとしても、差止請求権の行使が、事実上不可能である為、特許出願は無意味であると主張している人もいます。
ロシアの特許出願における特徴の一つに、出願人の女性比率の高さが挙げられます。
出典:WIPO
ロシアは男女比で女性の方が多いというものありますが(男:女=0.86:1)、ここでも、強いロシア人女性像が垣間見えるような気がします。
上記の女性出願人は、主にバイオ、化学、製薬分野での特許出願が多くなっており、ロシア全体で見ると、食品化学分野での出願が多くなっています(13.2%)。
出典:WIPO
いずれ機会があれば、特許取得プロセスについてもまとめてみたいと思います。
出典レポート→
http://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_941_2017.pdf
サンクトペテルブルクのコアワーキングスペース6選
8月、Softbank GroupとSoftBank Vision FundがNYのコアワーキング運営のスタートアップWeWorkに44億USDの巨額投資を発表し、話題になりました。WeWorkは現在19カ国178地域に展開し、世界のコアワーキングビジネスを牽引しています(残念ながら、2017年12月現在、ロシアにはWeWorkは進出していません)。
今回は、サンクトペテルブルクのコアワーキングスペースを紹介したいと思います。
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ロシアインダストリー4.0
先日、ロシアではサイバーセキュリティやIoTなどのデジタルエコノミー分野について、2020年までに標準化が進められる、と報道されました。
標準化が進められるのは、以下の6分野です。
- サイバーセキュリティ
- ビッグデータ
- IoT
- スマートマニュファクチャリング
- スマートシティ
- AI
これは、今年の夏にプーチン大統領によって承認された「ロシアデジタルエコノミー開発プログラム」に端を発しています。今回はロシアにおけるIoT分野をみていきたいと思います。
ロシアインダストリー4.0
ロシアにおけるIoT分野は、国際的なリサーチ会社であるIDCの調査によると、2017年時点ですでに約40億ドル、2020年までには約90億ドルまで市場拡大すると報告されており、政府としても次のハイテク産業として注力していく分野になります。
IoTと一言に言っても、その範囲はウェアラブルデバイスのようなコンシューマープロダクツから、ネットワークやクラウドサービスなどのインフラまで、様々なサービスを含みます。シリコンバレーのVCが2015年に作ったカオスマップでは、IoT業界は、①コンシューマー向け、②エンタープライズ向け、③インフラストラクチャに分けられました。
一方で、2016年にGeektimesが作成したロシア版のカオスマップでは、以下の7項目に分けられており、特にエンタープライズインターネットについては、政府も大きな関心を持っています。
出典:Geektimes
実際、私が今年参加したエカテリンブルクでの国際見本市「Innoprom 2017」でも、ファクトリーオートメーションやエンタープライズ向けIoTが大きく取り上げられていました。
▼日露共同プロジェクトとしてチェリャビンスクの教育系スタートアップの展示会参加・日本進出リサーチを支援
ロシアIoT規格の標準化
IoT規格の標準化については、IoTがカバーする範囲の広さや、市場自体の魅力から、世界中で様々な業界団体やアライアンスが生まれています。特に、エンタープライズ向けのIoTでは、規格の標準化と産業への早期導入が望まれており、多くの業界団体が存在しています。グローバルなアライアンスへは、ロシアからはロステレコムとカシペルスキーラボが、Industroial Internet Consortium(AT&T, Cisco, GE, Intel, IBMなどが中心となって設立された)に参加しています。
▼IoT産業のアライアンスMAP
出典:Geektimes
ロシア国内では、2016年に産業貿易省の主導で、ロシアIoTの標準化を目的とした、2018年までのロードマップが作成されました。作成の実務をになったのは、政府系ファンドのインターネットイニシアティブ開発基金です。プロジェクトは6月の「Innoprom 2016」で発表され、30以上の組織と70人以上の専門家が関わりました。ワーキンググループには、Samsung、T-One Group(交通状況のモニタリング技術)、ベンチャー投資も行うSistemaのグループ会社、ロステレコム(通信会社)、インターネットイニシアティブ開発基金などが参加しています。また、参画した専門家の多くが、その後IoT協会のメンバーとしても活躍しています。
▼インターネットイニシアティブ開発基金とモスクワ国立工科大学によって設立された「IoT協会(英:Internet of things association)」
IoTのロードマップによると2018年までに、IoT機器用マイコンとナローバンド、ブロードバンド無線モジュールの為のオープンソースコードが開発され、2020年までには870〜876MHz、915〜921МHz帯で作動するIoT機器が5億台製造されるとしています。現状、ロシアで作動しているIoT機器は2,000万台と推定されています。また、2020年までにIoT関連で30ものイベントが開催されることになっています。
ロードマップでは以下の4つの方向性で、ロシアIoTの標準化を進めていくとされています。
- 2017年第四四半期までに、IoTのインフラストラクチャにおける統一要件の作成。特にエンタープライズ向けIoT分野。
- IoT機器の近距離無線通信における870〜876MHz、915〜921МHz帯域の利用可能性への検討。864〜870МHz帯域の利用条件の確認。(ロシア、ヨーロッパのLPWAは868MHz帯を利用している。ロシアでは、この帯域を利用しているのは、ストリシュ(露:Стриж)、net868(露:Сеть868) とEverynet。)
- IoTデバイスの接続を含む、694〜790MHz帯域でのモバイルブロードバンドの大規模導入
- 2018年第二四半期までに、エンタープライズ向けIoTのデータ保管・保護に関して、規格とプロトコル技術の提言作成
IoTカンファレンス in Moscow
2015年から始まり、今年で4回目の開催となるモスクワのIoTカンファレンスでは、今年もカシペルスキーラボなどの民間企業、IoT協会などの業界団体、ロシア産業貿易省などから専門家がスピーカーとして登壇し、IoTの技術分野から法整備・標準化に到るまで、幅広く議論されました。
カンファレンスを主催したのは、2016年に創業され、IoTクラウドプラットフォームを提供するRightechです。また、インターネットイニシアティブ開発基金や、IoT協会、IoT関連の情報発信を行うiot.ruもパートナーとして協力しています。
また、ロシア・CIS諸国で初めてLPWAを提供したプロバイダーであり、IoTプラットフォームを提供するストリシュも展示ブースを出展しました。ストリシュは2015年にスコルコボの入居企業となり、インターネットイニシアティブ開発基金の主催するアクセラレータープログラムにも参加しました。2016年には、200万ルーブルの資金調達にも成功し、業界における認知度も高い企業です。
今回は、ロシアにおけるIoT分野の概要をお伝えしました。製造業とも関わりの深いこの分野は、国内産業振興で製造業の発展に力を入れているロシア政府としても鬼門となる分野です。今後も、政府のバックアップのもと、大きく発展していく分野になると思います。次回は、分野ごとにもう少し各企業の紹介ができればと思います。
ロシアにおける仮想通貨規制の変遷
10月、プーチン大統領は政府と中央銀行に対し、ロシアにおけるICOと仮想通貨マイニングについて、2018年7月までに法整備を進めるよう指示しました。発表の中では、マイニング事業者は情報拡散事業者として、国家レジストリへの登録と求められ、納税義務が課されることについて言及されました。
2014年から現在まで、ロシアにおける仮想通貨規制の変遷を追ってみたいと思います。
ロシアにおける仮想通貨規制の変遷
2009年にサトシ・ナカモトによって発表されたビットコインは、2013年に当時としての最高価格1BTC(ビットコインの単位)=1,100ドルをつけましたが、その後は中国政府の規制、日本でも話題になったマウントゴックスの閉鎖に伴い、価格が低迷しました。
出典:Wikipedia
その後、日本の改正資金決済法施行に伴う、日本での需要に支えられ、2017年9月30日現在、1BTC=4,300ドルまで値を上げています。取引数は現在に至るまで増加の一途を辿っています。
2014年から15年にかけて、ロシアではマネーロンダリングや裏社会的な活動をする集団への融資に使われる可能性があるとして、財務省が厳しい規制をかけていました。一方で、ロシア中央銀行やロシア最大のデジタル決済ベンチャーのQIWIが、共同研究を行うなど、ロシアにおける仮想通貨の可能性については議論が続けられていました。
2015年の半ばあたりから、厳しい規制をかけてきた財務省でも、ビットコインに対しては規制をしていくものの、その根幹となるブロックチェーン技術に対しては、開発を歓迎するなど、発言に変化が見られるようになります。
2016年、ロシア右派活動家のボリス・チトブや、リベラル政党のParty of Growthによって、ビットコイン合法化に向けての活動が活発になり、財務省も規制緩和に向けて動き始めます。同年11月29日、ついにロシアにおけるビットコインの使用に罰則を与える案が撤回されました。
▼成長党(英:Party of Growth)代表のボリス・チトブ
出典:Wikipedia
2017年に入ると、財務省はロシアにおけるビットコイン取引における合法化について示唆するようになります。7月のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムにおいて、プーチン大統領は、ビットコインに次ぐ取引高の仮想通貨イーサリアムを開発したヴィタリック・ブテリンと会話を交わし、仮想通貨取引に興味を持っていることが報道されました。
8月には国内最大の業界団体となるロシア暗号通貨・ブロックチェーン協会が発足され、政府と業界の間で議論を活性化する立場を担う形となります。また、9月には、国内の大学5校で、ビットコインに代表される仮想通貨やブロックチェーン関連の講義が行われることが判明しました。
ロシア人の仮想通貨熱
ロシア暗号通貨・ブロックチェーン協会によると、現在ロシアにおける国内の仮想通貨のトレーダーは150万人と推定され、LiveCoinや、YoBit.Netなどのロシア発取引所も続々と生まれてきています。
また、電気代の安いロシアでは、マイニング(コンピューターを用いて、仮想通貨ネットワークを安全に保つための演算処理を行い、その報酬として仮想通貨を手に入れる行為)に対する需要も高く、国内の個人マイナーは50,000人を超え、事業としてマイニングに取り組む企業だけでも1,000を数えます。
今年になってから、仮想通貨・ブロックチェーン関連のイベントも数多く行われており、サンクトペテルブルクでは8月にWavesが主催する「ICO Hypthon」、9月にはインターネット技術に関する大統領顧問をつとめるゲルマン・クリメンコがスピーカーとして登壇した「Blockchain Life 2017」が開催されました。モスクワではレッドオクトーバーにて、毎週のようにブロックチェーン勉強会が開催されており、10月には同地にて「International Blockchain Forum」が開催されました。
▼「Waves」
アレクサンドル・イワノフによって2016年にローンチされた、仮想通貨による資金調達を可能にするブロックチェーンプラットフォーム→詳しくはこちらの記事を参照
▼インターネット技術に関する大統領顧問をつとめるゲルマン・クリメンコ
出典:Wikipedia
ICOバブル
仮想通貨を使った新しい資金調達方法ICO(Initial Coin Offeringの略。「トークン」と呼ばれる仮想通貨を発行し、それを販売することで開発費や研究費を調達する。)がバブルを迎えています。以下は、ロシア発のICO案件です。その調達額に注目して下さい。
▼「MobileGo」5,300万ドル
発行したトークンでアイテム購入ができるモバイルゲームプラットフォーム
▼「Russian Mining Center」4,320万ドル
ロシア政府も後押ししている、次世代のマイニング機器を開発するプロジェクト
▼「SONM」4,200万ドル
ブロックチェーン技術を活用したフォグスーパーコンピューティング
▼「Blackmoon Crypto」3,000万ドル
投資ファンドのためのトークン化プラットフォーム
▼「KICKICO」2,090万ドル
ブロックチェーンによる資金調達プラットフォーム
ICOのプロジェクトには、技術的に実現可能性の低いものも含まれています。しかし、それにもかかわらず多くのロシア発スタートアップが資金調達に成功しています。実際、私の友人のスタートアップ数社もICOに取り組んでいます。
2016年頃からロシアの仮想通貨における規制緩和は、ICOバブルを経て、改めて慎重な議論が求められており、今後の動向に目が離せなません。一方でプーチン大統領をはじめとして、政府は技術活用には関心があり、業界との対話姿勢を取っています。中国やアメリカなど世界が規制強化に動く中、妥協点を見つけ、成長産業に育てることができれば、IT人材の流出にもブレーキをかけることができるかもしれません。
ロシアe-Healthの主要スタートアップを紹介
今回はロシア遠隔医療の続編です。ロシアのe-Healthに関わるスタートアップを紹介します。
オンライン医療
コンサルテーション
DocDoc.ru
ロシア最大のオンライン医師予約プラットフォームです。ヨーロッパロシア、シベリアの14都市にサービスを展開しています。これまでに120万人近いユーザーが利用しており、2,500以上の病院、40,000人以上の医師と提携しています(2017年8月29日現在)。日本でもオンラインの診察予約サービスはありますが、医師を選ぶというのがロシアならではです。
使い方は至ってシンプルで、診察を受けたい専門(内科、耳鼻科など)、診察を受けたい病院のエリア、時間帯を入力すると、条件に該当する医師を提案してくれます。診察可能時間と、値段、医師のレビューなどを見ることができます。また、医師の学歴や職歴なども細かく掲載されています。モバイルアプリはPlayストアで、10,000回以上ダウンロードされています。
▼モバイルアプリインターフェース
DocDocは2017年5月にロシア最大の銀行ズベルバンクによる買収が発表されました。買収金額は公表されていませんが、ズベルバンクが79.6%を保有することなる為、専門家によると8億~16億ルーブルと推定されています。
Online Doctor
以前にも紹介した、オンライン医療コンサルテーションのプラットフォームです。プラットフォーム上では、オンラインコンサルテーションから医師の予約までワンストップで行うことができます。1回のコンサルテーション費用は、800ルーブルからです。
また、運営元のMobile Medical Technology社が提供する「Pediator24/7」は小児科医に特化したプラットフォームで、今年の「Startup of the Year2016」でオーディエンス賞に選ばれています。
▼「Pediator24/7」についてはこちら
ONDOC
ONDOCは、個人の医療カルテ作成から、医師のオンライン予約、オンラインコンサルテーションまでワンストップで提供するプラットフォームです。ユーザー自身が日々のチェックを行えるように、体重や血圧などの基本的な情報から、各専門医からの診断やアドバイスなども記録できるようになっています。
また、検索した医師については、オンラインでのコンサルテーション(チャットかビデオ通話を選べる)、オンライン予約ができるようになっており、機能的にはDocDoc.ruやOnline Doctorと重複する部分がありますが、よりパーソナライズに特化したアプリケーションと見ることができそうです。
▼モバイルアプリインターフェース
ONDOCは、上記で紹介した「Startup of the Year」の2015年の受賞者でもあり、また、1997年から続くITプロジェクトのコンクール「Golden Site」で、2015年医療ポータル部門を受賞しています。
▼「Golden Site」
СпросиДоктора(英:Sprosidoktora)
プラットフォームに登録された医師に質問を投げ、コンサルテーションを受けることができます。1,000人以上の医師がサイトに登録しており、5万件以上の質問に対し、4万件以上の回答がされています。毎月のサイト訪問UUは30万人を越えます。
料金体系にはいくつかのプランが用意されています。回答される保証がなく2-3日以内の返信で問題なければ、無料で質問を投げることができます。即日回答を希望するのであれば、質問投稿1回あたり149rub、1-2日以内の回答であれば49rubを支払う必要があります。また、ビデオ通話によるコンサルテーションを受ける事もできます。1回あたり15分で300rubです。
▼料金表
また、質問やオンラインコンサルテーション以外にも、各種医療検査の分析(75rub)や、検査結果を元にした医師からのアドバイス(149rub)、医師に書いてもらった書類の解析(筆跡が汚くて、読めないことがある) 、などのサービスも提供しています。
DOC+
DOC+がかかえる専属医師に往診してもらうことができます。内科医、小児科医、耳鼻科医、神経科医、検査の為の看護師を呼ぶことができます。往診を以来する地域によっても値段が変動します。現在はモスクワに限ってのサービス提供です。
例)モスクワ市内に内科医に往診にもらう場合 →2,300rub(郊外は5,000rub)
また、チャットを使って、オンラインでのコンサルテーションを受ける事もできます。こちらはサブスクリプションモデルで、小児科医であれば初月無料、2ヶ月目以降は300rub/月、1,599rub/半年、2,999rub/年、それ以外の専門医であれば、初月100rub、2ヶ月目以降は400rub/月です。このプランに入っていれば、往診を25%ディスカウントで依頼することができます。
健康記録、医療記録の保存
Izitherm
Izithermは専用のシートを脇の下に貼ることによって、常に体温データがBluetoothを通してモバイルアプリに送られてきます。シートには3Mの開発した素材が使用されており、アレルギーの心配などがなく、安全です。
Izithermは2016年から、ノヴォシビルスクのアカデミパーク内で高い品質管理基準のもと、製造されています。また、インターネットイニシアティブ開発基金のアクセラレータプログラムを修了し、同ファンドから210万rubの投資を受けています。
▼アカデミパークについてはこちら
Welltory
Welltoryは、スマートフォンのライト部分に指をかざすだけで、血圧や心拍を測りストレス値やエネルギー値というパラメーターを用いて、自分の体調を測定できるモバイルアプリを提供しています。有料プランはサブスクリプションモデルで、199rub/月です。このプランでは200以上のデータソースを用いて、より詳細に自分の体調を測ることができます。また、蓄積された健康データを用いて、999rub/月で専門の分析医からコンサルテーションを受ける事もできます。
▼インターフェース
UNIM
UNIMは、患者が遠隔でもがん診断にかかるコンサルテーションを受けることができるように、Digital PathologyというSaaSプラットフォームを開発しました。がんの検査キットはロシア連邦内であれば無料で配送されます。費用は22,500rubからで、すでに実施された検査のセカンドオピニオンを依頼する事もできます。検査には海外の専門医も参加します。検査結果は3~4営業日後にはオンラインで確認できます。また、コンサルテーションもオンラインで受ける事ができるので、近くにがんセンターのない患者にとっては、画期的なソリューションとなっています。
BtoB
Doctor at Work
完全クローズドな医師のSNSです。50万人以上の医師が登録し、ロシア・CIS諸国の34%の医師が登録しており、ロシア語圏最大の医師ネットワークを形成しています。2009年に創業してから、数々のコンクールで受賞しており、ファウンダーのサージン・スタニスラフはロシアのe-Health業界では有名人です。
今後は、その巨大な医師ネットワークを活用して、医師のオンライン予約や、遠隔医療分野にサービス展開していくことが想定されています。
Cправаочник врача(英:Spravochnik vracha)
専門家向けの医療情報モバイルアプリです。この分野では、パイオニア的存在として、300,000人以上の医療関係者が登録しています。医療用語の用語集、計算ツール、論文の閲覧、医療トピックニュース配信を提供しています。運営会社の「MIR」は、BtoCで、個人の健康データを記録できる「My Health」も開発しています。
また、e-Health業界には大手IT企業も進出しています。ロシア最大のITホールディングスであるMail.ruグループや、ロシア最大の検索ポータルYandexが自社サービスを展開し、また積極的に投資も行なっています。
もちろん、多くのVCもロシアのe-Healthスタートアップに投資しています。以下は、代表例です。
- Guard Capital (DocDoc.ru, ≪Doctor at Work≫, GetBetter)
- Prostor Capital (VitaPortal)
- Runa Capital (VitaPortal)
- Intel Capital (CardioDX)
- インターネットイニシアティブ開発基金
(«Кардиоритм», UNIM, «MIR», など) - Maxfield Capital (Patients Know Best, Sensoplex, など).
- ru-Net Holdings (Practo)
- ロシアベンチャーカンパニーバイオファンド
(«РТМ Диагностика», «Экзоатлет», «Семиотик») - Altair Capital (Wealth)
ロシアの医療は平均寿命の伸長や、医療施設の再編、医師の処遇改善など問題が山積です。政府は日本との経済プランに医療分野を盛り込むなど、海外からの技術・ノウハウを取り込んで、医療改革に力をいれています。スタートアップが持ち込むIT技術がどのように、ロシアの医療現場を先進国のレベルに引き上げていくのか、規制問題も含め、今後の動向が注目されます。
参考記事→
新法案に揺れるロシア遠隔医療市場
規制の入ったロシア遠隔医療
7月30日、遠隔医療についての法案改正にプーチン大統領が正式に署名しました。これにより、ロシアには遠隔医療について明確な規制がかかることになりました。
法案によって、明確に定義されたのは、大きく分けて以下の3点です。
- 医師は遠隔診療で「診断」を下すことはできない。遠隔で医療コンサルテーション(「診断」には該当しない)を受けることは可能だが、2回目以降の診察に限る。初診は従来通り、病院にて診察を受けなければならない。
- 患者は遠隔でも処方箋、証明書などの各種書類を電子版で受け取ることができる。
- 患者は医師から医療コンサルテーションを受ける際は、政府が管理する一元管理システムへの登録が必要となる。
政府が一元管理する医療システムには、ロシア全土の公立病院、私立病院、各種医療機関が接続され、電子カルテシステムが導入されます。タス通信によると、このシステムの開発・保守点検にかかる予算は年間7億5000万ルーブルと試算されています。
法律の施行は2018年1月からです。IT業界は今回の法案を非常に残念に受け止めています。遠隔診断を認めるべきと、既存の医療業界と戦ってきたインターネットイニシアティブ開発基金のヌルベコフ氏はインタビューの中で、「我々は昨年この議論を始めた時点に戻ってしまった。法案は患者のリモートによる経過観察についてであって、遠隔”医療”についてではない」と答えています。
それでも、専門家たちはここ3〜5年でロシアにおける遠隔医療は大きく発展する分野だと信じています。今回は、ロシアの遠隔医療について、見ていきたいと思います。
▼遠隔医療についてはこちら
成長する民間の医療サービス市場
ロシアにおける医療分野は、日露経済協力プランの中でも1番目に挙げられるほど、関心の高い分野であり、成長が期待されています。GDPも-0.6%を記録する中、2016年のロシア医療市場は、前年対比+4.7%の2,2兆ルーブルにまで成長しました。特に近年、民間の医療サービス分野の成長率が高く、2015年には6,720億ルーブルの市場規模になっています。
出典: BusinesStat
経済制裁とインフレーションによって、相対的な可処分所得が減っている現状でも、医療費への支出を抑えているのは、低所得グループであり、ミドル層、アッパーミドル層の食と健康への購買力は落ちていません。中でも、民間の医療サービスは、ロシアの国立病院などの公的サービスでは受けることができるものではない為、需要が集まっています。
▼ロシアの医療制度についてはこちら
ロシアの遠隔医療
現在、ロシア遠隔医療の年間サービス利用者は1,000万人とされており、1回の利用金額の平均が500ルーブルであることから、市場規模は50億ルーブル程度と試算されています。また、専門家によると、市場規模はここ3〜5年で200億ルーブル程度まで成長すると見られており、これは年率+40%の成長率です。
出典:エクスペルト紙から試算
ロシアで遠隔医療の技術が必要とされ、発展してきている分野としては、大きく分けて以下の4つが挙げられます。
- 時間外診療、救急医療
- 小児医療(特に生まれて1年目は、医師への相談機会は多いが、通院する必要がない場合も多い)
- 慢性疾患患者の経過観察(通院にかかる費用と労力をかけたくないという意思が働き、患者が診察に来ずに重症を引き起こすことがある)
- セカンドオピニオン
実際に、小児科医に特化した遠隔医療サービスの「Pediator24/7」への問い合わせにも、その傾向を見ることができます。
▼「Pediator24/7」 の詳細はこちら
現場の医師たちも遠隔でコンサルテーションする事に関しては、概ね理解を示しているようです。医師たちによるクローズドなネットワークサイト「Doctor at Work」が25,000人医師を対象にしたアンケート調査によると、回答者の70%が妥当性の検討には準備があるとし、メリットを感じられないと答えたのは7%にとどまりました。
出典:Doctor at Work
また、65%以上が遠隔でのコンサルテーションに対して、反対しないと回答しています。一方で、反対した医師の多くが、外来診療なしでの診察に難しさを感じているようです。
出典:Doctor at Work
これには、ロシア特有の事情が関係しているかもしれません。アンケート回答者の75%が診察室以外(ほとんどが電話ではあるが)で、患者とコミュニケーションしている事がわかりました。実際、私もかかりつけの医師とはViberで常に連絡が取れるようになっています。
▼かかりつけ医とはメッセンジャーで繋がっており、色んな事を質問できる
一方で、アンケート結果からは、実際に遠隔でのコンサルテーション経験があると答えた医師は、全体の21%にとどまりました。現場では、医師と患者の遠隔のコミュニケーションが成り立っているにも関わらず、遠隔でのコンサルテーションというと、回答率が下がるのは、遠隔医療に対する正しい認識の問題も含まれているのかもしれません。
出典:Doctor at Work
ロシアにおける遠隔医療のプレイヤーは大きく分けて、以下の3つに分けられます。
- IT企業(遠隔医療に特化したプレイヤーと大手IT企業の1サービスに分けられる)
- 国立病院、私立病院、各種医療機関
- 保険会社
現在、遠隔医療における契約形態は、サービスプロバイダー(1.のIT企業)と医療機関のBtoB契約になります。医師と直接の契約を結ぶことはありません。医療機関はサービスプロバイダーとの間で手数料のやりとりを行います。サービスプロバイダーは、基本はプライベートクリニックとの契約を好みます。公立の病院に比べ、意思決定のスピードが早いからです。
また、保険プランの一部に遠隔での医療コンサルテーションをサービスとして導入する、保険会社が出てきています。年間5~7,000ルーブルの保険料で、提携の医療機関から何度でもオンラインコンサルテーションを受けることができます。専門の医師への診察を希望すると、外来で1回2,100ルーブル、通常のオンラインコンサルテーションであれば800ルーブルがかかります。これに目をつけた保険会社が、他者との差別化で遠隔医療の分野に進出してきています。
▼「VTB銀行」は子供向けの個人加入保険にオンラインでの医療コンサルテーションのサービスを組み込んでいる
5,900ルーブルプラン:初診科の先生からコンサルテーションを受けることができる
12,900ルーブルプラン:専門の先生からコンサルテーションを受けることができる
▼「ルネサンス保険」は「ドクトルリャダム」と提携して、個人加入保険の購入者に初年度は無料でオンライン医療コンサルテーションのサービスを提供する
上記は、任意医療保険ですが、今後、オンラインコンサルテーションに強制医療保険の適用が検討されるようになれば、大きく市場が拡大していくことが予想されます。そうなると、今後は国立病院でもオンラインコンサルテーションの導入が進む可能性があります。
出典:BusinesStat
今後も成長が期待されるロシア遠隔医療ですが、今回の法案成立を受けて、成長が鈍化するのか、それとも明確な指針が示された事によって、参入プレイヤーが増え、市場は拡大していくのか。今後の動向が注目されます。
次回は、遠隔医療のITプレイヤー達を紹介します!
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