ロシアのVR市場を牽引する「Fibrum」
移転しました。
ロシアにおけるVR市場
2015〜2016年にかけて、「AVRA」(Association of argmented and virtual reality)の調査によると、ロシアにおけるVR/ARのベンチャー投資金額は、200万Rubから700万Rubに成長しました。これは、世界のVR/ARのベンチャー投資金額(1200万USD)の約0.5%に当たります。一社当たりの投資金額は15,000~250万USDでした。2017年には投資金額がさらに2倍に成長すると見込まれています。
▼「AVRA」(Association of argmented and virtual reality)
個人と民間企業からなるロシアのVR/AR業界における非営利団体。会員からの年会費によって賄われており、各種イベントの開催やレポートの発表、会員同士のネットワーキングを行っている。
また、「MOMRI」(Modern Media Research Institute)の調査によると、2016年、VRの消費市場としては、製品(HMDやモーションコントローラ)、ソフトウェア開発、VRコンテンツが12億Rub、ビジネスの現場におけるVR技術を用いたソリューションは3億4820万Rubでした。これは、2015年と比較すると3,8倍の成長率です。
▼「MOMRI」(Modern Media Research Institute)
マスメディア系リサーチ会社。2016年に他メディア企業と共に「VRコンソーシアム」を立ち上げる。
MOMRI — Институт современных медиа
また、同調査において、2020年までにロシアにおけるVRの利用者は、現在の56万人から541万人まで増えると推測されることが、報告されています。
2015年から2016年にかけてロシアにおけるVR/ARの企業数は60社から183社へと大きく数を伸ばしました。そのうち、2/3がモスクワを拠点とする企業となっています。また、企業の規模としては社員数が20人以下のスタートアップベンチャーが多くなっています。ビジネスの現場にVRソリューションを持ち込んでいるチームの数は、300チーム以上になっています。
2016年は、ロシアの大手企業も相次いでVR事業への参加を表明しました。代表的な企業としては、Сбербанк, "СИБУР", Росатом, "Газпром"があります。また、2016年9月にはMail.ru GroupもVRゲームのプロトタイプを発表しました。
VR技術の成長分野
新聞社「Business Petersburg」のインタビューの中で、Oleg Kelnik(Planoplan共同創業者)は、「不動産業界ではデベロッパーがVRの導入を始めている。主にデザイン・設計と、建物のデモンストレーションでだ。一般消費者向けはまだ技術自体が高すぎる」「2017年末に向けて、警備・セキュリティ業界における人材育成にVR技術が生かされる」と答えています。
▼「Planoplan」
2Dの設計図からVR上で部屋を再現し、インテリアの配置をデザインするソフトを開発している。
2015年にVRソリューションが活用された市場としては、広告・マーケティング分野でしが、2016年になると、教育・娯楽分野、不動産分野でのVR技術の活用が盛んになりました。今後は、エンターテイメント・娯楽分野(アトラクション、ゲーム、360°映画)、教育分野(企業研修など)が成長すると見込まれています。
2016年、ロシアの大手VCである「Sistema VC」は、教育系VRを提供する「MEL Science」に投資しました。
▼「Sitema VC」
モスクワに拠点があるVC。Ozon.ru、YouDO、NFWare、VisionLabsなどに投資している。画像認識や自然言語解析、VR/AR技術に注力している。
Sistema Venture Capital (Sistema_VC)
▼「MEL Science」
VR技術を活用した子供用化学実験キットのサブスクリプションビジネス。2016年に「Sistema VC」から$2.5Mの投資を受けている。
ロシアのVRを牽引する「Fibrum」
FIBRUM Virtual Reality · Fibrum
FibrumはモバイルVRのハードウェア開発と、VRコンテンツ・ソフトウェア開発の会社です。創業は2014年で、現在は35人のチームを抱えています。自社開発のモバイルVR「Fibrum Pro」は、米:Amazon, BestBuy, Bluewire、欧:Media Markt, Müller, Gravis、露:М.Видео, Связнойで購入することができます。また、BtoC市場だけでなく、民間企業や政府系の開発案件も受託しています。
▼「Fibrum Pro」サイト上で$49で購入可能
Fibrumは、2014年カザンで行われたSEOカンファレンスに参加して、「Fibrum Pro」を紹介して、脚光を浴びました。
VII SEO конференция / SEO conference - Казань, 29-30 сентября 2016 год
2015年には、GoogleとAliExpressからも表彰を受け、その年にSkolkovoレジデンツになっています。2015年に開催されたSkolkovo主催の「Startup Village 2015」においてBest Global Startup賞を受賞しています。また、先日ご紹介したHigh School of Economics主催の「Startup of the Year」においても2015年度のハードウェア賞を受賞しています。
▼「Startup of the Year」とは
Fibrumは2016年から、ハードウェアの開発・販売からソフトウェア開発の方に事業を ピボットしました。すでに30種類程度のVRアプリを制作・販売していましたが、VRアプリの開発者とユーザー、そしてVR製品のメーカーをマッチングするプラットフォーム「Fibrum Platform」を展開しました。現在はソフトウェアからの収益が全体収益の50%を超えています。
▼「Fibrum Platform」
マネタイズ方法もユニークで、2017年には「Fibrum Game Cards」というサブスクリプションモデルをローンチしています。このカードを購入しプロモコードを先ほどの「 Fibrum Platform」でアクティベートすることで、Fibrumのアプリを無料でダウンロードすることができるようになります。料金設定は以下の通りです。
- $4.95/30days
- $9.95/90days
- $17.95/180days
▼「Fibrum Game Cards」
また、上記のカード以外にも「Best VR attructions」カード($4.95)や、「Best VR Apps for children」カード($9.95)など、ジャンルごとにも様々なカードを販売しています。
Fibrumのこのマネタイズ方法は、特にギフト商戦において成功しました。2016年のクリスマス時期のアプリダウンロード数が昨週対比で、Google Playで218%、AppStoreで448%を記録し、年末商戦と合わせると93万ダウンロードを記録しています。「Fibrum Pro」と「Fibrum Game Cards」を合わせても、$70以下ですから、素晴らしいマーケティング戦略だと思います。
Fibrumは昨年度のCESやSXSWにも積極的に参加しています。ソフトウェア販売に関してはすでに海外からの売り上げが80%を超えています。「Fibrum Pro」だけですでに30,000台以上販売しており、アプリのダウンロード数は1800万ダウンロードを記録しています。
画像加工アプリの「Prisma」など、ロシアでは画像認識・モーション認識 の技術が伸びてきているように思います。今後は、VRもオンライン上で完結するものではなく、モーションコントローラと組み合わせた形や、AR技術の発展が期待されるのではないでしょうか。
参考記事→