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ロシアのベンチャー投資市場

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近年、日本では、いわゆるアベノミクス第三の矢として成長戦略が掲げられ、イノベーションの創出やベンチャー企業支援が進められて来ました。2016年の国内ベンチャー投資が前年比2割増の2,100億円を記録し、初めて2,000億円を突破しました。

www.nikkei.com

 

今回は、ロシアにおけるベンチャー投資について、概観してみたいと思います。

 

マクロ経済の影響色濃く

ロシアベンチャーキャピタル協会(RVCA: Russian Venture Capital Association)の調査によると、2016年のロシアにおけるベンチャー投資件数は、昨年対比+10.5%の210件で、投資金額は前年の85%にあたる$128Mでした。投資件数は2013年から基本的には増加傾向となっています。

 


出典:「RVCA」

 

▼ロシア初のベンチャー投資専門機関「Russian Venture Capital Association」

  • 1997年に設立
  • ヨーロッパの「Invest Europe」、「National Venture Capital Assocition」に加盟
  • 主な活動は、イベントの開催、専門家の育成・ベンチャー企業とのマッチング、各種リサーチの提供

www.rvca.ru

 

2013年から投資件数が急激に伸びている背景には、プーチン大統領の発案によって設立されたインターネットイニシアティブ開発基金」(iidf:Internet Initiatives Development Fund)の影響があります。主に、シードステージ・アーリーステージの企業を投資対象とする政府系VCファンドで、毎年80社程度に投資し、ファンド総額は60億ルーブルです。

 

▼「Internet Initiatives Development Fund」

  • 2013年設立、ファンド規模60億ルーブル、累計投資企業270社
  • 投資ポートフォリオ プレシード 193社、シード 13社、ラウンドA 3社
  • 12の地方拠点有り、各種アクセラレータプログラム開催

www.iidf.ru

 

また、2012年はロシア版シリコンバレーのスコルコヴォが創設された年であり、当初は潤沢な資金が投入されましたが、2014年の経済危機を境に市場におけるベンチャー投資額は低迷を続けています。これを受けて、一回の平均ディール額も2016年は$60万となっています。

 

政府主導のベンチャー市場

ロシアのベンチャー投資市場においては、どのような分野の投資案件が多いのでしょうか。

 


出典:「RVCA」

「RVCA」の調査によると、全体の7割近くがIT・通信系の投資案件であることがわかります。また、近年は医療分野やロボット産業への投資も増えてきています。

特にICT分野における投資案件の内訳として、最も多いのがビジネスソリューションの分野です。次いで、近年、数は減少しているものの、Eコマース、教育、広告分野への投資が多くなっています。一方、ここ数年増えているのが、キュレーションサービス・プラットフォームへの投資です。2016年は16件、$11Mが投資されました。

 


出典:「RVCA」

 

ロシアのベンチャー投資における一つの特徴として、政府系ファンドの投資案件の多さが上げられます。2013年には、投資案件の43.5%が政府系ファンドから投資を受けています。

特に、バイオ/医療、産業技術系の投資案件に関しては、2013年はほぼ100%政府系ファンドが投資しています。近年は、この政府系ファンドの投資案件数は、徐々に減ってきており、また投資分野もIT・通信分野への投資数が多くなってきています。


出典:「RVCA」

 

 

出口戦略

ロシアベンチャー市場において、最も問題とされるのが出口戦略です。日本のマザーズやJASDAQのように、新興企業向けの株式市場がない為、事実上、ロシア国内におけるIPOの可能性はないと言っても過言ではありません。

これらの状況から、ベンチャー企業にとってのExitは必然的にM&Aや事業売却が中心になります。2016年Exit件数は34件でした。件数自体は直近3年間で右肩あがりではあるものの、Exitにかかる金額は、2016年は前年の69%にあたる$590Mです。平均の売却金額は年々減少傾向にありベンチャー投資金額全体も減少傾向にあることから、しばらくは苦しい状態が続くと思われます。


出典:「RVCA」

 

また、外資系ファンドからの投資件数、金額、ともに減少傾向であり、ロシアのスタートアップが国外に出口戦略を見出すために、米や欧州に拠点を移す事例が多くみられます。私のいるサンクトペテルブルクでは主にバルト三国や東ヨーロッパに会社登記をして、開発チームだけをロシアに残すスタートアップが多くなっています。

 

世界における
ロシアベンチャー市場

やはり、世界のベンチャー市場と比較すると、ロシアのベンチャー投資は遅れていると言わざるを得ません。一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの調査によると、世界で最もベンチャー投資が進んでいる米国、欧州に続いて、中国でもベンチャー投資市場が大きく成長しており、2015年には投資社数が3000件を超えています。また、冒頭でもあったように、市場が拡大してきており、2015年の投資金額は$1.16Bと、ロシアの約7倍の規模でした。

 


出典:「一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター

 

現状ではロシアのスタートアップは政府系ファンドからシードマネーを調達し、早々に海外に拠点を移し、海外でリスクマネーを調達することが得策と言わざるを得ない状況です。そういった意味では、日本市場から大手企業がオープンイノベーションなどの枠組みで、ロシアの優れたスタートアップに投資をし、日本市場や世界市場に展開していくという方向性はあると思います。

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