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ロシアにおける仮想通貨規制の変遷

移転しました。

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10月、プーチン大統領は政府と中央銀行に対し、ロシアにおけるICOと仮想通貨マイニングについて、2018年7月までに法整備を進めるよう指示しました。発表の中では、マイニング事業者は情報拡散事業者として、国家レジストリへの登録と求められ、納税義務が課されることについて言及されました。

jp.cointelegraph.com

2014年から現在まで、ロシアにおける仮想通貨規制の変遷を追ってみたいと思います。 

 

ロシアにおける仮想通貨規制の変遷

2009年にサトシ・ナカモトによって発表されたビットコインは、2013年に当時としての最高価格1BTC(ビットコインの単位)=1,100ドルをつけましたが、その後は中国政府の規制、日本でも話題になったマウントゴックスの閉鎖に伴い、価格が低迷しました。

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出典:Wikipedia

 

その後、日本の改正資金決済法施行に伴う、日本での需要に支えられ、2017年9月30日現在、1BTC=4,300ドルまで値を上げています。取引数は現在に至るまで増加の一途を辿っています。

 

2014年から15年にかけて、ロシアではマネーロンダリングや裏社会的な活動をする集団への融資に使われる可能性があるとして、財務省が厳しい規制をかけていました。一方で、ロシア中央銀行やロシア最大のデジタル決済ベンチャーのQIWIが、共同研究を行うなど、ロシアにおける仮想通貨の可能性については議論が続けられていました。

 

2015年の半ばあたりから、厳しい規制をかけてきた財務省でも、ビットコインに対しては規制をしていくものの、その根幹となるブロックチェーン技術に対しては、開発を歓迎するなど、発言に変化が見られるようになります。

 

2016年、ロシア右派活動家のボリス・チトブや、リベラル政党のParty of Growthによって、ビットコイン合法化に向けての活動が活発になり、財務省規制緩和に向けて動き始めます。同年11月29日、ついにロシアにおけるビットコインの使用に罰則を与える案が撤回されました。

▼成長党(英:Party of Growth)代表のボリス・チトブ

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出典:Wikipedia

 

 

2017年に入ると、財務省はロシアにおけるビットコイン取引における合法化について示唆するようになります。7月のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムにおいて、プーチン大統領は、ビットコインに次ぐ取引高の仮想通貨イーサリアムを開発したヴィタリック・ブテリンと会話を交わし、仮想通貨取引に興味を持っていることが報道されました

 

8月には国内最大の業界団体となるロシア暗号通貨・ブロックチェーン協会が発足され、政府と業界の間で議論を活性化する立場を担う形となります。また、9月には、国内の大学5校で、ビットコインに代表される仮想通貨やブロックチェーン関連の講義が行われることが判明しました。

 

 

ロシア人の仮想通貨熱

ロシア暗号通貨・ブロックチェーン協会によると、現在ロシアにおける国内の仮想通貨のトレーダーは150万人と推定され、LiveCoinや、YoBit.Netなどのロシア発取引所も続々と生まれてきています。 

 

 

また、電気代の安いロシアでは、マイニング(コンピューターを用いて、仮想通貨ネットワークを安全に保つための演算処理を行い、その報酬として仮想通貨を手に入れる行為)に対する需要も高く、国内の個人マイナーは50,000人を超え、事業としてマイニングに取り組む企業だけでも1,000を数えます。

 

今年になってから、仮想通貨・ブロックチェーン関連のイベントも数多く行われており、サンクトペテルブルクでは8月にWavesが主催する「ICO Hypthon」、9月にはインターネット技術に関する大統領顧問をつとめるゲルマン・クリメンコがスピーカーとして登壇した「Blockchain Life 2017」が開催されました。モスクワではレッドオクトーバーにて、毎週のようにブロックチェーン勉強会が開催されており、10月には同地にて「International Blockchain Forum」が開催されました。

▼「Waves
アレクサンドル・イワノフによって2016年にローンチされた、仮想通貨による資金調達を可能にするブロックチェーンプラットフォーム→詳しくはこちらの記事を参照

wavesplatform.com

 

▼インターネット技術に関する大統領顧問をつとめるゲルマン・クリメンコ

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出典:Wikipedia

 

ICOバブル

仮想通貨を使った新しい資金調達方法ICOInitial Coin Offeringの略。「トークン」と呼ばれる仮想通貨を発行し、それを販売することで開発費や研究費を調達する。)がバブルを迎えています。以下は、ロシア発のICO案件です。その調達額に注目して下さい。

▼「MobileGo」5,300万ドル
発行したトークンでアイテム購入ができるモバイルゲームプラットフォーム

mobilego.io

 

▼「Russian Mining Center」4,320万ドル
ロシア政府も後押ししている、次世代のマイニング機器を開発するプロジェクト

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出典:RMC — Мультиклеточный майнинг. ICO RMC

 

▼「SONM」4,200万ドル
ブロックチェーン技術を活用したフォグスーパーコンピューティング

 

sonm.io

 

▼「Blackmoon Crypto」3,000万ドル
投資ファンドのためのトークン化プラットフォーム

Blackmoon Crypto

 

▼「KICKICO」2,090万ドル
ブロックチェーンによる資金調達プラットフォーム

www.kickico.com

 

ICOのプロジェクトには、技術的に実現可能性の低いものも含まれています。しかし、それにもかかわらず多くのロシア発スタートアップが資金調達に成功しています。実際、私の友人のスタートアップ数社もICOに取り組んでいます。

 

2016年頃からロシアの仮想通貨における規制緩和は、ICOバブルを経て、改めて慎重な議論が求められており、今後の動向に目が離せなません。一方でプーチン大統領をはじめとして、政府は技術活用には関心があり、業界との対話姿勢を取っています。中国やアメリカなど世界が規制強化に動く中、妥協点を見つけ、成長産業に育てることができれば、IT人材の流出にもブレーキをかけることができるかもしれません。

 

 

地図で見るロシアハンドブック

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