ロシアe-Healthの主要スタートアップを紹介
移転しました。
今回はロシア遠隔医療の続編です。ロシアのe-Healthに関わるスタートアップを紹介します。
オンライン医療
コンサルテーション
DocDoc.ru
ロシア最大のオンライン医師予約プラットフォームです。ヨーロッパロシア、シベリアの14都市にサービスを展開しています。これまでに120万人近いユーザーが利用しており、2,500以上の病院、40,000人以上の医師と提携しています(2017年8月29日現在)。日本でもオンラインの診察予約サービスはありますが、医師を選ぶというのがロシアならではです。
使い方は至ってシンプルで、診察を受けたい専門(内科、耳鼻科など)、診察を受けたい病院のエリア、時間帯を入力すると、条件に該当する医師を提案してくれます。診察可能時間と、値段、医師のレビューなどを見ることができます。また、医師の学歴や職歴なども細かく掲載されています。モバイルアプリはPlayストアで、10,000回以上ダウンロードされています。
▼モバイルアプリインターフェース
DocDocは2017年5月にロシア最大の銀行ズベルバンクによる買収が発表されました。買収金額は公表されていませんが、ズベルバンクが79.6%を保有することなる為、専門家によると8億~16億ルーブルと推定されています。
Online Doctor
以前にも紹介した、オンライン医療コンサルテーションのプラットフォームです。プラットフォーム上では、オンラインコンサルテーションから医師の予約までワンストップで行うことができます。1回のコンサルテーション費用は、800ルーブルからです。
また、運営元のMobile Medical Technology社が提供する「Pediator24/7」は小児科医に特化したプラットフォームで、今年の「Startup of the Year2016」でオーディエンス賞に選ばれています。
▼「Pediator24/7」についてはこちら
ONDOC
ONDOCは、個人の医療カルテ作成から、医師のオンライン予約、オンラインコンサルテーションまでワンストップで提供するプラットフォームです。ユーザー自身が日々のチェックを行えるように、体重や血圧などの基本的な情報から、各専門医からの診断やアドバイスなども記録できるようになっています。
また、検索した医師については、オンラインでのコンサルテーション(チャットかビデオ通話を選べる)、オンライン予約ができるようになっており、機能的にはDocDoc.ruやOnline Doctorと重複する部分がありますが、よりパーソナライズに特化したアプリケーションと見ることができそうです。
▼モバイルアプリインターフェース
ONDOCは、上記で紹介した「Startup of the Year」の2015年の受賞者でもあり、また、1997年から続くITプロジェクトのコンクール「Golden Site」で、2015年医療ポータル部門を受賞しています。
▼「Golden Site」
СпросиДоктора(英:Sprosidoktora)
プラットフォームに登録された医師に質問を投げ、コンサルテーションを受けることができます。1,000人以上の医師がサイトに登録しており、5万件以上の質問に対し、4万件以上の回答がされています。毎月のサイト訪問UUは30万人を越えます。
料金体系にはいくつかのプランが用意されています。回答される保証がなく2-3日以内の返信で問題なければ、無料で質問を投げることができます。即日回答を希望するのであれば、質問投稿1回あたり149rub、1-2日以内の回答であれば49rubを支払う必要があります。また、ビデオ通話によるコンサルテーションを受ける事もできます。1回あたり15分で300rubです。
▼料金表
また、質問やオンラインコンサルテーション以外にも、各種医療検査の分析(75rub)や、検査結果を元にした医師からのアドバイス(149rub)、医師に書いてもらった書類の解析(筆跡が汚くて、読めないことがある) 、などのサービスも提供しています。
DOC+
DOC+がかかえる専属医師に往診してもらうことができます。内科医、小児科医、耳鼻科医、神経科医、検査の為の看護師を呼ぶことができます。往診を以来する地域によっても値段が変動します。現在はモスクワに限ってのサービス提供です。
例)モスクワ市内に内科医に往診にもらう場合 →2,300rub(郊外は5,000rub)
また、チャットを使って、オンラインでのコンサルテーションを受ける事もできます。こちらはサブスクリプションモデルで、小児科医であれば初月無料、2ヶ月目以降は300rub/月、1,599rub/半年、2,999rub/年、それ以外の専門医であれば、初月100rub、2ヶ月目以降は400rub/月です。このプランに入っていれば、往診を25%ディスカウントで依頼することができます。
健康記録、医療記録の保存
Izitherm
Izithermは専用のシートを脇の下に貼ることによって、常に体温データがBluetoothを通してモバイルアプリに送られてきます。シートには3Mの開発した素材が使用されており、アレルギーの心配などがなく、安全です。
Izithermは2016年から、ノヴォシビルスクのアカデミパーク内で高い品質管理基準のもと、製造されています。また、インターネットイニシアティブ開発基金のアクセラレータプログラムを修了し、同ファンドから210万rubの投資を受けています。
▼アカデミパークについてはこちら
Welltory
Welltoryは、スマートフォンのライト部分に指をかざすだけで、血圧や心拍を測りストレス値やエネルギー値というパラメーターを用いて、自分の体調を測定できるモバイルアプリを提供しています。有料プランはサブスクリプションモデルで、199rub/月です。このプランでは200以上のデータソースを用いて、より詳細に自分の体調を測ることができます。また、蓄積された健康データを用いて、999rub/月で専門の分析医からコンサルテーションを受ける事もできます。
▼インターフェース
UNIM
UNIMは、患者が遠隔でもがん診断にかかるコンサルテーションを受けることができるように、Digital PathologyというSaaSプラットフォームを開発しました。がんの検査キットはロシア連邦内であれば無料で配送されます。費用は22,500rubからで、すでに実施された検査のセカンドオピニオンを依頼する事もできます。検査には海外の専門医も参加します。検査結果は3~4営業日後にはオンラインで確認できます。また、コンサルテーションもオンラインで受ける事ができるので、近くにがんセンターのない患者にとっては、画期的なソリューションとなっています。
BtoB
Doctor at Work
完全クローズドな医師のSNSです。50万人以上の医師が登録し、ロシア・CIS諸国の34%の医師が登録しており、ロシア語圏最大の医師ネットワークを形成しています。2009年に創業してから、数々のコンクールで受賞しており、ファウンダーのサージン・スタニスラフはロシアのe-Health業界では有名人です。
今後は、その巨大な医師ネットワークを活用して、医師のオンライン予約や、遠隔医療分野にサービス展開していくことが想定されています。
Cправаочник врача(英:Spravochnik vracha)
専門家向けの医療情報モバイルアプリです。この分野では、パイオニア的存在として、300,000人以上の医療関係者が登録しています。医療用語の用語集、計算ツール、論文の閲覧、医療トピックニュース配信を提供しています。運営会社の「MIR」は、BtoCで、個人の健康データを記録できる「My Health」も開発しています。
また、e-Health業界には大手IT企業も進出しています。ロシア最大のITホールディングスであるMail.ruグループや、ロシア最大の検索ポータルYandexが自社サービスを展開し、また積極的に投資も行なっています。
もちろん、多くのVCもロシアのe-Healthスタートアップに投資しています。以下は、代表例です。
- Guard Capital (DocDoc.ru, ≪Doctor at Work≫, GetBetter)
- Prostor Capital (VitaPortal)
- Runa Capital (VitaPortal)
- Intel Capital (CardioDX)
- インターネットイニシアティブ開発基金
(«Кардиоритм», UNIM, «MIR», など) - Maxfield Capital (Patients Know Best, Sensoplex, など).
- ru-Net Holdings (Practo)
- ロシアベンチャーカンパニーバイオファンド
(«РТМ Диагностика», «Экзоатлет», «Семиотик») - Altair Capital (Wealth)
ロシアの医療は平均寿命の伸長や、医療施設の再編、医師の処遇改善など問題が山積です。政府は日本との経済プランに医療分野を盛り込むなど、海外からの技術・ノウハウを取り込んで、医療改革に力をいれています。スタートアップが持ち込むIT技術がどのように、ロシアの医療現場を先進国のレベルに引き上げていくのか、規制問題も含め、今後の動向が注目されます。
参考記事→