【ペットテックとロシアスタートアップ】
移転しました。
⑴ペットテックって?
「ペットテック」とは、ペットとテクノロジーを掛け合わせた造語です。日本においてはまだあまりなじみがないかもしれませんが、アメリカをはじめとするペット保有率の高い国においては拡大しつつある市場です。
⑵ロシアのペット業界
ロシアは世界的に見てもペット保有率が高い国だと言うことができます。
「Mars Petcare」が2018年秋に発表した調査によれば、ロシアにおいて5500万世帯が何らかのペットを保有しており、その数はロシアの全世帯数の53%にも上ります。一方、社団法人 ペットフード協会の調査によると、日本では2018年の犬の飼育世帯率は全世帯数の12,64%、猫は9.78%であり、ロシアの家庭においてどれほどペットが身近な存在であるかが伺えます。さらに、ロシアのペット保有率は現在も増加傾向にあり、2015年から2018年の3年間で14%増加したと「INTERFAX.RU」が伝えています。
次に、2019年春にロシアのマーケティングエージェント「Rodemax」がペット保有家庭を対象として行ったアンケート調査を見てみましょう。
種類 |
保有率(%) |
猫 |
64,7 |
犬 |
40,2 |
ファンシーラット |
4,6 |
ハムスター |
3,7 |
モルモット |
3,5 |
1,3 |
|
1,1 |
|
Декоративные мыши |
1,3 |
0,8 |
|
ウサギ |
2,6 |
イタチ |
0,7 |
0,5 |
|
鳥 |
7,1 |
カタツムリ |
1,1 |
10,4 |
猫を飼っている世帯が圧倒的に多いということが分かります。さらに、アンケート調査から、1種類だけでなく、例えば猫と犬などのように複数の種類・数のペットを飼っている家庭が多いですね。
⑶ロシアのペットテック関連スタートアップ
次に、ロシアのペットテック関連のスタートアップについて見ていきましょう!アメリカや日本でもみられるオーソドックスなものから、斬新なものまで、様々なスタートアップが誕生しています。
①Animo
スマホアプリを使って遠隔で猫と犬の餌やりができる「給餌型」のサービスで、一番よくあるペットテックの形態です。餌をあげる時間や餌の量も調整することができます。
Animoの最新バージョンでは、それぞれのペットの個体の種類や年齢、体重に応じて、健康のために最適な餌のやり方を自動で実行するシステムが追加されました。
価格は7000ルーブル(約12000円)から。
② Lexi Club
ロシアのスタートアップ「ReGa Risk Sharing」(https://www.openshift.com/)による、ブロックチェーンの技術を用いたペット保険サービス。ペットが病気になった時に積立金の80%の保障金を受け取ることができます。月額100ルーブル(約170円)から900ルーブル(約1550円)までのプランがあります。
③Mishiko
GPS機能とスマート機能がついた犬用の首輪「Mishiko」。AIが搭載されており、ペットの健康状態や体型をデータとして把握することができます。
この首輪をスマホアプリと連動させることによって、飼い主はスマートフォンで簡単にそれらのデータをチェックすることができるほか、例えば動物病院へ行く日の通知を受けることもできます。また、事前に安全ゾーンを登録しておけばそのゾーンから出た際に通知で知らせてくれます。GPSにより、いつでも正確なペットの位置情報・行動を把握することができます。
他にも、ペットの個体情報に応じて健康維持のためのアドバイス(運動量・食事量など)を受けることができ、この首輪があればスマートフォンでペットの管理をほぼすべて済ませることが可能です。
価格は4590ルーブル(約7860円)。
④Teddy Food
オンラインの慈善活動支援サービス。普段忙しくて時間のない人が簡単に保護動物支援をしたり、より多くの保護犬・猫に効率よく支援を行ったりするために開発されました。
保護施設にいる犬や猫に、餌・おもちゃを購入してあげる、治療費を負担するなどの支援活動をオンラインで行うことができる。ユーザーはのリストから支援したい保護犬・猫を選ぶことができるだけでなく、保護施設にいる動物の様子をカメラを通して見ることができます。
支援活動を続ければ、ポイントがたまり、それをTeddy Foodのパートナー店での買い物などに利用することができます。
このサービスの最大の目的は保護犬・猫の新たな飼い主を見つけることであり、サービスユーザーは気に入った犬・猫がいれば引き取ることが可能です。
⑤ Собака-гуляка(Dog walk)
犬の散歩をはじめとしたペットの世話を代理で行ってもらえるサービス。犬の世話だけでなく、猫の世話のサービスもあり、基本的には訪問・在宅型です。
ペット所有者だけでなく、動物好きの人が働く場としても嬉しいシステムです。
1日当たりの 利用料金は、依頼する散歩の回数で変わります。
散歩なし・家での基本の世話のみだと790ルーブル(約1350円)、1~2回の散歩を加えると1090(約1870円)ルーブルとなります。
⑥Zooly
Zoolyは、ペット飼育に関する全てのサービスを一つにまとめたオールインワンアプリを提供しているスタートアップです。
従来、日常的に利用するペット用品の購入や散歩代行、シッターサービス、また定期的に必要となるトリミングや病院などのサービスはそれぞれ分散していました。Zoolyのアプリは、それらのペットに関する10個ものサービスのオーダーと支払いを一元化させることで、飼い主の負担を減らします。
現在はB2B事業者とのパートナーシップに力を入れていて、アプリ運営へのCRMの導入も今後進めていく予定です。また、ターゲットとなる市場は現在9億ドルで、年間6%の成長が予想されており、今後の発展が期待される企業です。
※このスタートアップは、今年4月に東京・福岡で行われたビジネスピッチイベント「Japan Bootcamp」に参加しました。
⑷大手ITもペットテックに参入済み
ロシア最大手のIT企業ヤンデックスも既に、ペット関連のサービスを開始しています。
今年の3月にヤンデックスはペット用品メーカーPurinaと共に失踪ペット捜索サービスのプラットフォームを立ち上げました。自分のペットが行方不明になった際に、サイトでペットの情報(写真や種類など)と連絡先を登録して、第三者が発見した際にスムーズに引き取ることができます。
このサービスでは、ヤンデックスの他のサービス(広告やマップ)のノウハウが生かされており、ペットを失くした人は位置情報を利用して探したり、ペットを発見した人も見つけた位置情報を登録することで飼い主を探します。また、ヤンデックスによるネット広告の仕組みと同様に、ペット捜索のポップアップが不特定多数に表示されます。
⑤まとめ
いかがでしたか?
ロシアにおいても日本においても、ペットテックは今後さらに盛り上がってくると考えられる、今目の離せない市場です。
自動餌やりや遠隔でのペット監視など、すでに多く存在しているサービス以外の斬新なテックがこの市場の盛り上がりを左右するのではないでしょうか。