SAMI To Russia

ロシアのITベンチャー、WEBサービス、起業家、スタートアップを紹介します。

急成長するロシアカーシェアリング市場

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 近年、モスクワ、サンクトペテルブルクの大都市では、灰色地や白地にオレンジのセダン、黄色ボディの軽自動車をよく見かけるようになりました。これらはカーシェアリング用の車両です。

 仕組みはいたって簡単です。

  1. 専用のアプリをダウンロードし、会員登録を行います。
  2. アプリの地図上から利用可能な車両を選択し、予約します
  3. 車両に到着したらアプリ上で開錠作業を行い、乗車します。

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写真:YouDrive 

乗車終了時も同様に、アプリ上から操作し、決済と施錠を行います。基本的な課金体系は、分単位の従量課金制です。今回は、急成長するロシアのカーシェアリング市場についてみていきたいと思います。

 

 

カーシェアリング事業者参入の歴史

 ロシアで初めてカーシェアリングのビジネスが始まったのは、意外にも2013年のことです。モスクワでAnytime、サンクトペテルブルクでストリートカーが事業をスタートしています。カーシェアリングは、車両の準備や駐車場の整備、ソフトウェアの開発など、他のITサービス産業に比べて、初期投資が大きくなりがちなビジネスです。ストリートカーは、当時、500万米ドルを投資して事業をスタートしましたが、市場が追いついてこなかった事もあり、2015年に撤退しています。

 

 2015年以降、いくつかの事業者が市場参入を果たしますが、ロシアにおけるカーシェアリングビジネスの火付け役は、2015年秋に参入したデリモービルです。以前からモスクワでは、交通渋滞が深刻な社会問題となっており、2013 年を境に、市が管理する有料駐車場が登場し、路上駐車が厳しく取り締まられました。

 

 モスクワ市は2015年にカーシェアリング事業者へ市内有料駐車場利用の優遇措置プログラムを発表し、1年間2万ルーブルという破格の値段を提示しました。デリモービルは市場参入と同時に、モスクワ市に掛け合い、プログラムに採択されました。また空港での駐車場も提供されました。モスクワ市はカーシェアリングを渋滞解消、市民生活向上の施策と考え、「Moscow Carsharing」としてブランディングしモスクワのカーシェアリング市場は、世界市場の中でも最も急激な伸びをみせていると言われています。Yandexによると、すでに40万人以上の利用者がいるとされています。

 

モスクワ市内の広告には「Moscow Carsharing」の下に、各事業者の企業ロゴが掲載されています

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  一方で、日本は2010年頃から利用者が伸び始め、2017年5月時点で108万人の利用者がいます。日本は駐車場管理事業者やレンタカー事業者がカーシェアリング市場に参入し、シェアを獲得しているという点が、ロシア市場とは大きく異なっています。

出典:交通エコロジー・モビリティ財団

 

 

デリモービルが市場を牽引

 現在のロシアカーシェアリング市場には20社を超えるプレイヤー企業がいるとされていますが、そのうち上位5社を紹介したいと思います(料金比較は表1)。

 

1.デリモービル

delimobil.ru

 2015年にモスクワで事業を開始。現在のロシアカーシェアリング市場で最大のシェアを誇ってます。車両台数は2230台。大都市以外にも地方都市にも展開し、現在8都市でサービス展開中。2018年2月にはシベリアのノボシビルスクに進出を果たしました。

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写真:デリモービル

 デリモービルが認知度を高めた理由の一つに、2016年のSNS炎上事件があります。利用者が起こした車両事故において、再三にわたってペナルティ金額が増額され、広告とは異なる支払い請求がされたこと、当時のPR担当者の対応姿勢の悪さがSNS上で炎上し、マスメディアにも取り上げられるスキャンダルとなりました。 

 

2.Belkacar

belkacar.ru

 2016年11月にモスクワで市場参入。カリフォルニア州立大学MBAに通っていた女性3人で創業しています。そのうちの一人、エカテリーナ・マカロヴァは、スコルコボビジネススクールのコース修了生。その為、スコルコボ敷地内で電気自動車を使った実証実験を行うなど、スコルコボとの関係が深いです。事業展開はモスクワ市とモスクワ州のみで行っており、1900台以上の車両を整備しています。モスクワだけでみると、前述のデリモービルよりもシェアが高くなっています。           

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写真:Belkacar

 

3.YouDrive

youdrive.today

 2015年に事業スタート。現在は、モスクワ、サンクトペテルブルク、ソチの3都市で展開中。車両台数は1100台。2018年2月には、個人事業主のタクシー運転手向けに、タクシーとして利用できるライセンスのある車両をカーシェアリングする「ユードライブ・ビジネス」をスタート。その他にも、二人乗り車、プレミアム車両の導入など、積極的に他社との差別化を図っています。          

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写真:YouDrive

 

4.Anytime

anytimecar.ru

 ロシアカーシェアリングの草分け的存在で、2013年にモスクワで事業をスタート。市場が未発達な段階での参入にも関わらず、現在までサービスを継続することができています。車両台数は667台。

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写真:Anytime

 

5.Car5

Каршеринг в Москве, Санкт-Петербурге, Сочи, Новосибирске. Онлайн аренда автомобиля по всей России

 モスクワ第3のカーシェアリングとして、2016年に市場参入を果たしました。当時は、利用費用が1分5ルーブル、待機費用が1分1.5ルーブルで、最安値での市場参入でありました。車両台数は200台。

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写真:Car5

 

 

大手IT企業Yandexの参入 

 2018年2月、Yandexがカーシェアリング事業への参入を発表しました。サービス名は「Yandex Drive」。従来のカーシェアリング事業者が提供している、利用時間(分)単位の課金体系の他に、到着地を登録して固定金額が表示される料金体系も準備しています。現在の対象地域はモスクワのみで、750台の車両が準備されています。

yandex.ru

 

 大手IT企業の参入は市場規模を大きく成長させる可能性があります。一方で、Yandex Taxiがそうであったように、今後、零細事業者をどんどんと飲み込み、単なるカーシェアリング事業者ではなく、プラットフォーマーになる可能性があります。市場が寡占状態になれば、価格競争やサービス競争が起きづらくなります。Yandex Driveの動向は今後も注目されるでしょう。

 

 

今後の課題と展望

 大きく成長するロシアのカーシェアリング市場ですが、まだまだ課題も多いです。例えば、車両台数が少なく、いざ利用しようとしても近場に車両がない、アプリで操作するので、インターネットに接続できない郊外まで行くと、利用終了の操作ができず無駄な課金が発生することなどが挙げられます。また、アプリそのものの精度(アプリ上で示された場所に車両がない、残燃料が間違って表示されるなど)含め、改善すべき点は多いといえます。

 とはいえ、カーシェアリングは周辺市場も含め、ロシアの生産性向上に大きく影響する可能性があります。すでに電気自動車での実証実験が始まっており、カーシェアリングでの電気自動車の配車が進めば、電気自動車普及に大きく影響することが予想されます。また、ヤンデックスは先日、モスクワ市内における自動運転の模様を動画で発表し、市場を驚かせました。ヤンデックスタクシーから導入が進められていくとされていますが、将来はカーシェアリングへの転用も十分に可能性があります。

Yandex Self-Driving Car. Moscow streets after a heavy snowfall
(モスクワ市内を自動運転する様子)

 

 経済制裁後、公共交通機関の利用は増えており、自動車の購入価格は今後も上がっていくことが予想されます。タクシー配車アプリの普及と共に、カーシェアリング 、また、郊外へのライドシェア(一般人の運転する車両の相乗り)などのモビリティに関するシェアリングエコノミーが、都市部を中心に大きく発展していくと考えられます。

 

 

表1 各社料金比較&車両タイプ

 

Anytime

Belkacar

デリモービル

Car5

YouDrive

Yandex
Drive

一般
利用
料金(分)

普通車  8~12rub
プレミアム車 15~18rub

普通車  8rub
プレミアム車 16rub

7~8rub

普通車  5~8rub
プレミアム車 15rub

8~14rub

朝 5~6rub
夜 7~8rub

待機
時間
料金(分)

2~3rub

普通車  2rub
プレミアム車 3rub

2.5rub

2rub

2.5~3.5rub

1.5~3.5rub

無料
時間枠

20分

20分

20分

20分
(1日4回まで)

20分

20分

夜間
無料
停車
時間

00:00~09:00

23:00~07:00

00:00~06:00

23:00~07:00

23:00~08:00

23:30~05:30

車両
タイプ

Hyundai Solaris, Kia Rio

Renault Kangoo

Skoda Octavia, Audi A3, Audi Q3, Nissan Qashqai, Renault Kaptur

Kia Rio
Kia Rio X-Line
Ford Fiesta

Mercedez-Benz CLA, Mercedez-Benz GLA


Hyundai Solaris

Renault Kaptur

Datsun mi-DO
Hyundai Solaris
Renault Stepway
Nissan Almera
VW Polo
Nissan X-Trail
 
Nissan X-Trail
Genesis G80

Smart ForTwo
Smart ForFour
Smart Cabrio
Smart Turbo
Skoda Rapid
Kia Rio
Mercedes A-Class
Nissan X-Trail
BMW 2-series
BMW i3
Mini Cooper

Renault Kaptur
Kia Rio
Kia Rio X-Line

ロシアで拡大するモバイル決済

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 先日、ロシア家電大手のエムビデオは、2017年3Qまでに、非接触型の決済が昨年対比で2.7倍に成長したと報告しました。その結果、店頭での非接触型決済比率は20%にまで増加しました。今回は、ロシアで急増するモバイル決済についてみていきたいと思います。

 

 

非接触型決済とは

 非接触型決済とは、ICチップのついたプラスチックカード(デビッドカードやクレジットカードなど)やモバイル端末などの媒体と店頭のPOSターミナルを使って、無線通信により行われる電子決済のことです。日本では楽天EdySuicaなどがこれに当たります。現在、ロシアの小売市場における主要な非接触型決済というと、金融機関が発行するICカードを使った非接触型決済(マスターカードコンタクトレス、ビザペイウェイブなど)と、アップルペイに代表されるモバイル決済があります。日本ではソニーが開発したFeliCaの規格がまだまだ多いですが、ロシアでは、国際的にメジャーなNFC(近距離無線通信)規格が主流です。

非接触型決済機能付きクレジットカード(Visa PayWave)

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出典:オリコ(http://www.orico.co.jp/creditcard/oricocardpaywave/

trendy.nikkeibp.co.jp

 

 ICカードを用いた非接触型決済は、NFC技術により、コンタクトレスICチップが搭載されたプラスチックカードを専用の端末に近づけるだけで決済を行うことができます。クレジットカードの国際標準規格EMV仕様に準拠しているので、セキュリティ面に関しても安心して利用できます。

blog.kaspersky.co.jp

 

 モバイル決済は、アップルなどのサービス提供会社が金融機関と提携し、ユーザーは提携の金融機関が発行しているカードをスマートフォンのアプリに登録することで利用可能です。モバイル決済もNFC技術を利用しているので、アプリがインストールされているスマートフォンをPOSターミナルに近づけるだけで、電子決済を行うことができます。

モバイル決済(Apple Pay)

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ICカードを用いた非接触型決済

 ロシア中央銀行によると、2017年の3Qまでに、小売セクターにおける個人の非現金決済比率が全体の38%を占めるまでに成長し、カードによる現金の引き出し金額を、カードを利用した非現金決済額が上回りました。ここ10年間でロシアのカード決済比率は上昇しています。

 

 マスターカードの非接触型決済、マスターカードコンタクトレス(旧称:マスタカードペイパス)は2008年にロシア市場で初めてテストされました。一方、ビザのコンタクトレス決済、ビザペイウェイブは2011年に導入されました。

 

ICカードのコンタクトレス決済は、その後も順調に利用者を伸ばし、2016年にビザが行ったアンケート調査では、アンケート回答者の約8割がICカードのコンタクトレス決済について知っており、そのうち約4割が実際に利用していると答えています。

 

 ロシアにおける非接触型決済の主流は、ICカードによるコンタクトレス決済で、X5グループは非接触型決済における70%がICカードの利用で、30%がアップルペイとサムスンペイ経由だったと報告されています。

 

 

モバイル決済市場

 ロシアでは、2016年秋から2017年にかけて非接触型決済比率が大幅に増加しています。モバイル決済の拡大は、各社の参入時期が理由の1つと考えられます(図1)。

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 ロシアでは、アップルペイ、サムスンペイがそれぞれ2016年秋に参入、アンドロイドペイは2017年5月に進出を果たしています。

 

 アップルペイに関しては、提携する金融機関の数が、ヨーロッパ諸国の中で最も多い39機関あり、またスマートフォンのロシア市場シェアでもサムスンにつぎ、二位になるなど、圧倒的な存在感を誇っています。一方で、サービスの立ち上げが半年遅れたアンドロイドペイは、急激な追い上げを見せており、先日のビザの発表によると、アンドロイドペイでのビザトークンの発行総数において、ロシアが世界一位となりました。ビンバンクによると、三社のシェアは、アップルペイが66%、サムスンペイが18%、アンドロイドペイが16%だそうです。

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サンクトペテルブルクのほとんどのスーパーチェーンでモバイル決済が利用可能です

 

NFC対応POSターミナルの拡充

 ロシアにおけるモバイル決済の伸長には、店頭における決済端末の整備が理由の1つとして考えられます。ロシア中央銀行の調査によると、2017年3Qにおける小売店舗のPOSターミナルの数は、約202万台で、年々急速に整備が進んでいます(図2)。

 

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 元々、ロシアではプラスチックカードを受け入れるPOSターミナルの導入が遅れていましたが、ロシアでは、決済端末は銀行に管理されており、銀行がターミナル整備の導入を急ぐ事で、非接触型決済への対応を促進させています。ジェムアルトによると、2016年のロシアにおけるNFC対応のPOSターミナルは約23万台で、全体の10%弱のカバー率でした。しかし、ズベルバンクをはじめとする大手銀行はNFC対応のPOSターミナルの導入を急いでおり、ベーテーベー銀行ではすでに半数以上の端末でNFC対応が進んでいます。一方で、ヨーロッパでは、POSターミナルは店舗で管理されているので、新たにコストをかけてターミナルを最新のものに更新していくインセンティブが働かないという背景があります。

 

 また、先日、スポーツウォッチやスマートウォッチを提供するガーミンがロシア市場において、モバイル決済可能なスマートウォッチ『ガーミンペイ』を導入していくことを発表し、現在、金融機関との調整を始めています。ロシアのモバイルウォレットアプリであるカシリョクも、銀行との提携を進め、モバイル決済市場に進出しています。POSターミナルの拡充と、新たなプレイヤーの参入により、ロシアの非接触型決済の市場は今後も拡大していくことが予想されます。 

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出典:Garminhttps://www.garmin.ru/garminpay/

 

 

日本進出を果たしたロシアIT企業

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日本からするとロシアは隣国ですが、馴染みの薄い国です。もっとも「遠い隣国」とは言い得て妙ですね。一方で、その日本にロシアのIT企業が進出していることはご存知でしょうか。数は多くないですが、ロシアの情報技術は日本の市場でも確かに求められています。今回は、日本市場に進出したロシアIT企業を紹介します。



日本に進出する海外IT企業

経済産業省の調査によると、2015年、日本に進出している外資系企業数は3,410社。うちアメリカ系企業が855社、欧州系企業が1,484社、中国が335社、その他アジア諸国からの進出企業が540社となっています。残念ながらロシアの項目はありませんが、欧州系企業に含まれる「その他ヨーロッパ」からの進出企業数は83社です。

 

また、IT企業の進出数は388社で、全体の約10%を占めます。各国別に見ると、進出企業におけるIT企業比率が高い国は、カナダ(28.1%)、インド(20.0%)、その他ヨーロッパ(18.1%)、韓国(16.8%)、アメリカ(15.9%)、中国(15.2%)です。

出典:経済産業省外資系企業動向調査2016」

 

2015年の新規参入企業数は74社で、そのうち13社がIT企業となっています。

 

外資系のどういったIT企業が日本に進出しているでしょうか。就職活動サイトのonecareerによると、2017年の人気外資系IT企業は、1位Google、2位Amazon Japan、3位LINE(韓国)、4位Japan IBM、5位Japan Microsoftとなっています。この他にも、セールスフォースやノキアモトローラ、アジア系ではHuaweiASUS、また、シャオミが正規代理店を通じて進出しており、大方の大手IT企業はすでに日本市場に進出しています。ちなみに2017年12月現在、Yandex、Mail.ru、RamblerなどのロシアのIT大手企業は日本へは進出していません。

 

一方で、近年は海外のスタートアップ企業の進出事例も増えています。2013年にはモバイル決済のSquare、Uberが、2014年にはAirbnb、 法人向けクラウドストレージのBoxが、2016年はNetflixが相次いで、ジャパンオフィスを作っています。



日本に進出するロシアIT企業

では、ロシアのIT企業の日本進出はどうでしょうか。以下、大企業からスタートアップまでご紹介したいします。

 

1. カスペルスキーラボ

www.kaspersky.co.jp

2003年にiMEX社と共同でジョイントベンチャーを設立。2006年に、モスクワ大学スラブ言語学科を卒業し、当時の営業統括部長だった川合林太郎氏が代表取締役に就任。2009年からロシア本社の日本法人株式取得が始まり、2011年に100%株式を取得し、完全子会社化。オフィス移転やスタッフの増強、マーケティングやプロモーションの強化を行いました。

 

2. Dr.Web

www.drweb.co.jp

CEOであるBoris A. Sharovはモスクワ大学アジアアフリカ諸国学部にて日本語を勉強しており、日本語が堪能です。韓国企業に対し、アンチウイルスエンジンのOEM供給を行い、日本でも大手のソフトウェア販売会社を通して販売されていましたが、こちらは2012年に終了しています。2010年に日本法人を設立し、Dr.Webブランドとして製品の販売・サポートを行なっています。

 

3. ELSYS

www.elsysj.net

ロシア政府系研究機関であるELSYS社と日本国内における独占ライセンス契約が結ばれ、2015年に日本法人が設立されました。当初は資本金1,000万円で10人の出資者により立ち上げられ、女優の「東てる美」も投資家に名を連ねていることでも有名になりました。がっちりマンデーで取材され、その認知度を高め、2016年のG7サミットでも導入されています。

 

4. カープライス

www.carprice.co.jp

ロシアカープライスの大株主であるオスカー・ハルトマンが2015年に市場調査で来日した際、元三井住友銀行でロシア駐在歴のあった、現CEOの梅下直也氏に日本法人の設立を持ちかけたのがきっかけです。ロシア法人と日本法人に直接の資本関係はありませんが、日本法人はオスカー・ハルトマンからの出資を受けています。2016年には三井物産株式会社引受先とする第三者割当増資を実施しており、資本金も5.5億円、従業員も20名から36名となり拡大中です。ちなみに三井物産株式会社はQiwiにも投資をした事で知られています。



上記以外にも、ジャパンオフィスはありませんが、画像加工アプリのPrismaは一時期SNSで大きな話題となりましたし、仮想通貨・ブロックチェーンに携わる人であれば、仮想通貨Etheriumの創業者ヴィタリック・ブテリンがロシア出身であることを知る人は多いと思います。また、ロシア発とは認知されていませんが、ブロックチェーンプラットフォームのWaves platformも知られていると思います。



海外スタートアップを
受け入れる国家戦略特区

とはいえ、まだまだロシアIT企業の日本進出事例は少ないです。ここには、文化的・社会的慣習の違いや、言語ハードル、情報不足による進まない市場理解など、多くの問題があります。これらは次回以降に見ていくとして、今回は、日本進出を考えたときに、現実的にすぐに問題になるビザにフォーカスして、スタートアップビザを提供している自治体を紹介したいと思います。

 

通常、外国人が日本で起業するために「経営・管理ビザ」を獲得するには、①500万円以上の資本金②常勤2人以上の職員の確保③事務所の開設、といった条件が前提となっています。起業前に日本で別のビザを所有していない場合、トラベルビザ、もしくはビジネスビザで入国してこの条件を揃えなければいけませんが、連絡先がホテルでは、事務所などの契約を結ぶのは難しいでしょう。非常にハードルの高い条件といえます。

 

2015年に始まった「スタートアップビザ」制度は、この3つの条件を半年間猶予します。半年間で条件をクリアできれば、通常の経営・管理ビザに切り替えることができる仕組みです。国家戦略特区に指定された地域が実行できる規制緩和策でもあります。

 

申請には、必要書類(申請書、事業計画書、工程表、履歴書、入国後6ヶ月の住居を明らかにする書類、銀行の預金残高証明書など)を原則、申請者本人が自治体に提出する必要があります。申請前に滞在中の住居を決めておかなければならない、提出は原則申請者本人に限るなど、少なくとも申請前に最低一度は渡航する必要がありそうですが、それでもスタートアップビザ制度のない自治体と比べると、格段に創業のハードルは下がります。

以下が、スタートアップビザ制度を提供する自治体です。

 

1. 仙台市

スタートアップビザ(外国人創業活動促進事業)について|仙台市

仙台市は、日本の北東エリアに位置し、この地域では最大の都市です。人口は108万人。2010年に地震がおきた宮城県の県庁所在地でもあります。震災後、国内外問わず起業支援に力を入れており、起業に関するポータルサイトも準備しています。仙台市ではスタートアップビザ申請にかかる書類は、指定の法律家に委託して提出してもらうことも可能です。


2. 新潟市

新潟市国家戦略特別区域「外国人創業活動促進事業」 新潟市

新潟市日本海側北部に位置し、人口は約80万人。1970年代に新潟ーハバロフスクの直行便が開通し、ロシアからの木材輸入、新潟からの中古車輸出で、日ロビジネスの歴史も長い地域です。新潟市では、オフィス賃料をサポートする補助金制度や、会社登記にかかる免税を受けることができます。


3. 東京都

www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp

東京都は日本の首都であり、人口約1,300万人のメガポリスです。東京周辺も含めるとNY都市圏を上回る世界最大の経済規模を有します。多くの日系・外資系会社が本社を構え、また、金融セクターとしては、世界第5位の規模です。外国人の創業を促す制度としては、スタートアップビザ制度以外にも、各種手続きを一元化した起業支援センターや、海外スタートアップ向けのアクセラレータプログラムなど、海外起業家向けに様々な支援プログラムが準備されています。特にアクセラレータプログラムでは、東京に本拠地を構える沢山の大手企業がパートナーとして登録しており、ネットワーキングやマッチングの場としても活用できます。プログラムはFintech、Newtech、Blockchainの3つがあります。


4. 愛知県

愛知県国家戦略特別区域「外国人創業活動促進事業」の実施について - 愛知県

愛知県は日本列島のほぼ中心に位置しており、人口約750万人。トヨタを輩出した県としても有名であり、自動車産業・航空機産業が盛んで、日本の工業の中心地です。愛知県ではスタートアップビザ申請にかかる書類は、指定の法律家に委託して提出してもらうことができます。


5. 今治市

今治市国家戦略特別区域外国人創業活動促進事業 | 営業戦略課 | 今治市

今治市は内海と太平洋に囲まれた島、四国の中に位置し、人口は約15万人。古くから造船業が盛んで、日本最大の造船会社も本社を置く。近年は、島と本土を結ぶ60kmに及ぶ橋の上をサイクリングできるとあって、国内外から多くのサイクリストが集まっています。


6. 広島県

www.pref.hiroshima.lg.jp


広島県今治市と海を挟んで対岸に位置し、人口は約280万人。日本有数の鉄の産出地で、戦時中、日本陸軍と海軍の拠点が置かれたことから、造船業自動車産業を始めとする工業が発展しました。MAZDAも本社は広島です。広島県は、国内外の著名なベンチャー関係者を招いてのセミナーやハッカソン、大企業とスタートアップとのミートアップなどベンチャー支援に力を入れいます。また、中高生向けプログラミング授業やGoogleとの協力イベントを開催するなどIT人材の育成にも取り組んでいます。広島県ではスタートアップビザ申請にかかる書類は、指定の法律家に委託して提出してもらうことができます。 


7. 福岡市

福岡市 国内初「スタートアップビザ(外国人創業活動促進事業)」を始めます

福岡市は日本の南西部に位置し、人口約150万人。古くから外港としての整備が進み、日本の外交・貿易の窓口でした。都市の人口規模・経済規模としては、日本でTOP5に入り、近年は中国や韓国の企業が日本進出の足がかりとして、福岡市へ進出する例も多く見られます。第三次産業は市内総生産額の約95%を占めており、商業・サービス業が中心の都市です。有名なゲーム会社レベルファイブも本社を置くことで知られています。福岡市はスタートアップビザ制度で最も成功している都市として知られています。その理由は、官民の連携です。受付窓口はスタートアップカフェとして、民間の書店の一角を借りて運営されており、日英バイリンガルと起業に詳しい専門家が常に2名常駐しています。そこでは会社登記や許認可申請を手伝ってくれる法律家や弁護士、会計士、オフィスを仲介する不動産業者などを紹介してもらえます。福岡市では、これらのサポートに加え、住居、オフィス、それぞれの賃料補助を受ける補助金制度が準備されています。

 

 

今回の記事は元々はロシアのスタートアップ企業向けに作ったものですが、日本人も知らないスタートアップビザ制度などについても調べる事ができたので、日本語版を載せておきます。それにしても、ロシア企業の進出事例はまだまだ少ないです。

ロシアにおける特許出願状況

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一年間の特許出願数でも中国が日本を追い越しそうになっています。特許はロシア語で、Патент(日:パテント)と言いますが、気になったのでWIPO世界知的所有権機関)の統計でロシアの特許出願状況を調べてみました。

 

 

特許出願数は1位はダントツ中国、ロシアはトップ10入り

 2016年までに、ロシアで特許出願されたのは41,587件。そのうち、約35%は海外からの国際特許出願なので、ロシア居住者によるロシア国内向けの特許出願数は、約3万件強です。2015〜2016年にかけて、ロシアでの特許申請数は-8.6%となり、ロシア居住者による特許出願数の減少が理由としては挙げられています。

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出典:WIPO

 

ロシアの特許出願数は、1995年と比べて着実に伸びてはきていますが、中国(約70倍)や、イラン(約40倍)と比べると、出願数が大きく伸びているとは言い難い状況です。これは、ロシアにおける知的財産権に対する認識や、知財戦略への動機付けがまだまだできていないからだと言われています。

ちなみに、日本は2005年頃から毎年の特許出願数は減少の一途を辿っています。

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出典:WIPO

 

 一方で、ロシアと日本は世界的にみて、特許取得比率が高いのが特徴です。ロシアでは、特許出願数と特許審査官の数のバランスがよく(欧州オフィスや韓国も同様)、特許審査において特許出願から審査結果が出るまでの期間の短縮に成功しています(平均して10.3ヵ月。特許出願数TOP10の国々においては最短。)。

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出典:WIPO

 

ロシアにおける特許出願数と特許審査人の推移

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出典:WIPO

 

ただ、裏を返せば、取得率が高く、審査結果までの期間が短いにも関わらず、特許申請数が伸びないのは、やはりそこに価値を見出している人が少ないからと言えるでしょう。

ロシアでは特許権を持っていたとしても、差止請求権の行使が、事実上不可能である為、特許出願は無意味であると主張している人もいます。

habrahabr.ru

 

ロシアの特許出願における特徴の一つに、出願人の女性比率の高さが挙げられます。

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出典:WIPO

 ロシアは男女比で女性の方が多いというものありますが(男:女=0.86:1)、ここでも、強いロシア人女性像が垣間見えるような気がします。

 

上記の女性出願人は、主にバイオ、化学、製薬分野での特許出願が多くなっており、ロシア全体で見ると、食品化学分野での出願が多くなっています(13.2%)。

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出典:WIPO

 

 

いずれ機会があれば、特許取得プロセスについてもまとめてみたいと思います。

 

出典レポート→

http://www.wipo.int/edocs/pubdocs/en/wipo_pub_941_2017.pdf

 

サンクトペテルブルクのコアワーキングスペース6選

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8月、Softbank GroupとSoftBank Vision FundがNYのコアワーキング運営のスタートアップWeWorkに44億USDの巨額投資を発表し、話題になりました。WeWorkは現在19カ国178地域に展開し、世界のコアワーキングビジネスを牽引しています(残念ながら、2017年12月現在、ロシアにはWeWorkは進出していません)。

 

今回は、サンクトペテルブルクのコアワーキングスペースを紹介したいと思います。

 

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ロシアインダストリー4.0

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先日、ロシアではサイバーセキュリティやIoTなどのデジタルエコノミー分野について、2020年までに標準化が進められる、と報道されました。

tass.ru


標準化が進められるのは、以下の6分野です。

  • サイバーセキュリティ
  • ビッグデータ
  • IoT
  • スマートマニュファクチャリング
  • スマートシティ
  • AI

これは、今年の夏にプーチン大統領によって承認された「ロシアデジタルエコノミー開発プログラム」に端を発しています。今回はロシアにおけるIoT分野をみていきたいと思います。

ロシアインダストリー4.0 

ロシアにおけるIoT分野は、国際的なリサーチ会社であるIDCの調査によると、2017年時点ですでに約40億ドル、2020年までには約90億ドルまで市場拡大すると報告されており、政府としても次のハイテク産業として注力していく分野になります。

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出典:http://idcrussia.com/ru/

 

IoTと一言に言っても、その範囲はウェアラブルバイスのようなコンシューマープロダクツから、ネットワークやクラウドサービスなどのインフラまで、様々なサービスを含みます。シリコンバレーのVCが2015年に作ったカオスマップでは、IoT業界は、①コンシューマー向け、②エンタープライズ向け、③インフラストラクチャに分けられました。

一方で、2016年にGeektimesが作成したロシア版のカオスマップでは、以下の7項目に分けられており、特にエンタープライズインターネットについては、政府も大きな関心を持っています。

  1. スマートトランスポート
  2. フィンテック・ヘルスケア
  3. スマートシティ・スマートグリッド
  4. スマートハウス
  5. エンタープライズインターネット
  6. IoT向けプラットフォーム
  7. その他

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出典:Geektimes

 

実際、私が今年参加したエカテリンブルクでの国際見本市「Innoprom 2017」でも、ファクトリーオートメーションやエンタープライズ向けIoTが大きく取り上げられていました。 

▼日露共同プロジェクトとしてチェリャビンスクの教育系スタートアップの展示会参加・日本進出リサーチを支援

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ロシアIoT規格の標準化 

IoT規格の標準化については、IoTがカバーする範囲の広さや、市場自体の魅力から、世界中で様々な業界団体やアライアンスが生まれています。特に、エンタープライズ向けのIoTでは、規格の標準化と産業への早期導入が望まれており、多くの業界団体が存在しています。グローバルなアライアンスへは、ロシアからはロステレコムとカシペルスキーラボが、Industroial Internet Consortium(AT&T, Cisco, GE, Intel, IBMなどが中心となって設立された)に参加しています。

▼IoT産業のアライアンスMAP

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出典:Geektimes

 

ロシア国内では、2016年に産業貿易省の主導で、ロシアIoTの標準化を目的とした、2018年までのロードマップが作成されました。作成の実務をになったのは、政府系ファンドのインターネットイニシアティブ開発基金です。プロジェクトは6月の「Innoprom 2016」で発表され、30以上の組織と70人以上の専門家が関わりました。ワーキンググループには、SamsungT-One Group(交通状況のモニタリング技術)、ベンチャー投資も行うSistemaのグループ会社、ロステレコム(通信会社)、インターネットイニシアティブ開発基金などが参加しています。また、参画した専門家の多くが、その後IoT協会のメンバーとしても活躍しています。

インターネットイニシアティブ開発基金とモスクワ国立工科大学によって設立された「IoT協会(英:Internet of things association)」

iotas.ru

 

 IoTのロードマップによると2018年までに、IoT機器用マイコンとナローバンド、ブロードバンド無線モジュールの為のオープンソースコードが開発され、2020年までには870〜876MHz、915〜921МHz帯で作動するIoT機器が5億台製造されるとしています。現状、ロシアで作動しているIoT機器は2,000万台と推定されています。また、2020年までにIoT関連で30ものイベントが開催されることになっています。

 ロードマップでは以下の4つの方向性で、ロシアIoTの標準化を進めていくとされています。

  1. 2017年第四四半期までに、IoTのインフラストラクチャにおける統一要件の作成。特にエンタープライズ向けIoT分野。
  2. IoT機器の近距離無線通信における870〜876MHz、915〜921МHz帯域の利用可能性への検討。864〜870МHz帯域の利用条件の確認。(ロシア、ヨーロッパのLPWAは868MHz帯を利用している。ロシアでは、この帯域を利用しているのは、ストリシュ(露:Стриж)net868(露:Сеть868) とEverynet。)
  3. IoTデバイスの接続を含む、694〜790MHz帯域でのモバイルブロードバンドの大規模導入
  4. 2018年第二四半期までに、エンタープライズ向けIoTのデータ保管・保護に関して、規格とプロトコル技術の提言作成

 

 

IoTカンファレンス in Moscow 


Интернет вещей 2017

 

2015年から始まり、今年で4回目の開催となるモスクワのIoTカンファレンスでは、今年もカシペルスキーラボなどの民間企業、IoT協会などの業界団体、ロシア産業貿易省などから専門家がスピーカーとして登壇し、IoTの技術分野から法整備・標準化に到るまで、幅広く議論されました。

iotconf.ru

 

カンファレンスを主催したのは、2016年に創業され、IoTクラウドプラットフォームを提供するRightechです。また、インターネットイニシアティブ開発基金や、IoT協会、IoT関連の情報発信を行うiot.ruもパートナーとして協力しています。

rightech.io

 

また、ロシア・CIS諸国で初めてLPWAを提供したプロバイダーであり、IoTプラットフォームを提供するストリシュも展示ブースを出展しました。ストリシュは2015年にスコルコボの入居企業となり、インターネットイニシアティブ開発基金の主催するアクセラレータープログラムにも参加しました。2016年には、200万ルーブルの資金調達にも成功し、業界における認知度も高い企業です。

strij.tech

 

今回は、ロシアにおけるIoT分野の概要をお伝えしました。製造業とも関わりの深いこの分野は、国内産業振興で製造業の発展に力を入れているロシア政府としても鬼門となる分野です。今後も、政府のバックアップのもと、大きく発展していく分野になると思います。次回は、分野ごとにもう少し各企業の紹介ができればと思います。

 

ロシアにおける仮想通貨規制の変遷

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10月、プーチン大統領は政府と中央銀行に対し、ロシアにおけるICOと仮想通貨マイニングについて、2018年7月までに法整備を進めるよう指示しました。発表の中では、マイニング事業者は情報拡散事業者として、国家レジストリへの登録と求められ、納税義務が課されることについて言及されました。

jp.cointelegraph.com

2014年から現在まで、ロシアにおける仮想通貨規制の変遷を追ってみたいと思います。 

 

ロシアにおける仮想通貨規制の変遷

2009年にサトシ・ナカモトによって発表されたビットコインは、2013年に当時としての最高価格1BTC(ビットコインの単位)=1,100ドルをつけましたが、その後は中国政府の規制、日本でも話題になったマウントゴックスの閉鎖に伴い、価格が低迷しました。

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出典:Wikipedia

 

その後、日本の改正資金決済法施行に伴う、日本での需要に支えられ、2017年9月30日現在、1BTC=4,300ドルまで値を上げています。取引数は現在に至るまで増加の一途を辿っています。

 

2014年から15年にかけて、ロシアではマネーロンダリングや裏社会的な活動をする集団への融資に使われる可能性があるとして、財務省が厳しい規制をかけていました。一方で、ロシア中央銀行やロシア最大のデジタル決済ベンチャーのQIWIが、共同研究を行うなど、ロシアにおける仮想通貨の可能性については議論が続けられていました。

 

2015年の半ばあたりから、厳しい規制をかけてきた財務省でも、ビットコインに対しては規制をしていくものの、その根幹となるブロックチェーン技術に対しては、開発を歓迎するなど、発言に変化が見られるようになります。

 

2016年、ロシア右派活動家のボリス・チトブや、リベラル政党のParty of Growthによって、ビットコイン合法化に向けての活動が活発になり、財務省規制緩和に向けて動き始めます。同年11月29日、ついにロシアにおけるビットコインの使用に罰則を与える案が撤回されました。

▼成長党(英:Party of Growth)代表のボリス・チトブ

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出典:Wikipedia

 

 

2017年に入ると、財務省はロシアにおけるビットコイン取引における合法化について示唆するようになります。7月のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムにおいて、プーチン大統領は、ビットコインに次ぐ取引高の仮想通貨イーサリアムを開発したヴィタリック・ブテリンと会話を交わし、仮想通貨取引に興味を持っていることが報道されました

 

8月には国内最大の業界団体となるロシア暗号通貨・ブロックチェーン協会が発足され、政府と業界の間で議論を活性化する立場を担う形となります。また、9月には、国内の大学5校で、ビットコインに代表される仮想通貨やブロックチェーン関連の講義が行われることが判明しました。

 

 

ロシア人の仮想通貨熱

ロシア暗号通貨・ブロックチェーン協会によると、現在ロシアにおける国内の仮想通貨のトレーダーは150万人と推定され、LiveCoinや、YoBit.Netなどのロシア発取引所も続々と生まれてきています。 

 

 

また、電気代の安いロシアでは、マイニング(コンピューターを用いて、仮想通貨ネットワークを安全に保つための演算処理を行い、その報酬として仮想通貨を手に入れる行為)に対する需要も高く、国内の個人マイナーは50,000人を超え、事業としてマイニングに取り組む企業だけでも1,000を数えます。

 

今年になってから、仮想通貨・ブロックチェーン関連のイベントも数多く行われており、サンクトペテルブルクでは8月にWavesが主催する「ICO Hypthon」、9月にはインターネット技術に関する大統領顧問をつとめるゲルマン・クリメンコがスピーカーとして登壇した「Blockchain Life 2017」が開催されました。モスクワではレッドオクトーバーにて、毎週のようにブロックチェーン勉強会が開催されており、10月には同地にて「International Blockchain Forum」が開催されました。

▼「Waves
アレクサンドル・イワノフによって2016年にローンチされた、仮想通貨による資金調達を可能にするブロックチェーンプラットフォーム→詳しくはこちらの記事を参照

wavesplatform.com

 

▼インターネット技術に関する大統領顧問をつとめるゲルマン・クリメンコ

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出典:Wikipedia

 

ICOバブル

仮想通貨を使った新しい資金調達方法ICOInitial Coin Offeringの略。「トークン」と呼ばれる仮想通貨を発行し、それを販売することで開発費や研究費を調達する。)がバブルを迎えています。以下は、ロシア発のICO案件です。その調達額に注目して下さい。

▼「MobileGo」5,300万ドル
発行したトークンでアイテム購入ができるモバイルゲームプラットフォーム

mobilego.io

 

▼「Russian Mining Center」4,320万ドル
ロシア政府も後押ししている、次世代のマイニング機器を開発するプロジェクト

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出典:RMC — Мультиклеточный майнинг. ICO RMC

 

▼「SONM」4,200万ドル
ブロックチェーン技術を活用したフォグスーパーコンピューティング

 

sonm.io

 

▼「Blackmoon Crypto」3,000万ドル
投資ファンドのためのトークン化プラットフォーム

Blackmoon Crypto

 

▼「KICKICO」2,090万ドル
ブロックチェーンによる資金調達プラットフォーム

www.kickico.com

 

ICOのプロジェクトには、技術的に実現可能性の低いものも含まれています。しかし、それにもかかわらず多くのロシア発スタートアップが資金調達に成功しています。実際、私の友人のスタートアップ数社もICOに取り組んでいます。

 

2016年頃からロシアの仮想通貨における規制緩和は、ICOバブルを経て、改めて慎重な議論が求められており、今後の動向に目が離せなません。一方でプーチン大統領をはじめとして、政府は技術活用には関心があり、業界との対話姿勢を取っています。中国やアメリカなど世界が規制強化に動く中、妥協点を見つけ、成長産業に育てることができれば、IT人材の流出にもブレーキをかけることができるかもしれません。