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ロシアのITベンチャー、WEBサービス、起業家、スタートアップを紹介します。

新法案に揺れるロシア遠隔医療市場

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規制の入ったロシア遠隔医療

7月30日、遠隔医療についての法案改正にプーチン大統領が正式に署名しました。これにより、ロシアには遠隔医療について明確な規制がかかることになりました。

vc.ru 

 

法案によって、明確に定義されたのは、大きく分けて以下の3点です。

  • 医師は遠隔診療で「診断」を下すことはできない。遠隔で医療コンサルティング(「診断」には該当しない)を受けることは可能だが、2回目以降の診察に限る。初診は従来通り、病院にて診察を受けなければならない。
  • 患者は遠隔でも処方箋、証明書などの各種書類を電子版で受け取ることができる。
  • 患者は医師から医療コンサルティングを受ける際は、政府が管理する一元管理システムへの登録が必要となる。

政府が一元管理する医療システムには、ロシア全土の公立病院、私立病院、各種医療機関が接続され、電子カルテシステムが導入されます。タス通信によると、このシステムの開発・保守点検にかかる予算は年間7億5000万ルーブルと試算されています。

 

法律の施行は2018年1月からです。IT業界は今回の法案を非常に残念に受け止めています。遠隔診断を認めるべきと、既存の医療業界と戦ってきたインターネットイニシアティブ開発基金のヌルベコフ氏はインタビューの中で、「我々は昨年この議論を始めた時点に戻ってしまった。法案は患者のリモートによる経過観察についてであって、遠隔”医療”についてではない」と答えています。

 

それでも、専門家たちはここ3〜5年でロシアにおける遠隔医療は大きく発展する分野だと信じています。今回は、ロシアの遠隔医療について、見ていきたいと思います。

 

 ▼遠隔医療についてはこちら 

medicalappnavi.com

 

成長する民間の医療サービス市場 

ロシアにおける医療分野は、日露経済協力プランの中でも1番目に挙げられるほど、関心の高い分野であり、成長が期待されています。GDPも-0.6%を記録する中、2016年のロシア医療市場は、前年対比+4.7%の2,2兆ルーブルにまで成長しました。特に近年、民間の医療サービス分野の成長率が高く、2015年には6,720億ルーブルの市場規模になっています。

出典: BusinesStat

 

経済制裁とインフレーションによって、相対的な可処分所得が減っている現状でも、医療費への支出を抑えているのは、低所得グループであり、ミドル層、アッパーミドル層の食と健康への購買力は落ちていません。中でも、民間の医療サービスは、ロシアの国立病院などの公的サービスでは受けることができるものではない為、需要が集まっています。

 

▼ロシアの医療制度についてはこちら

mtcjapan.ru

 

ロシアの遠隔医療

現在、ロシア遠隔医療の年間サービス利用者は1,000万人とされており、1回の利用金額の平均が500ルーブルであることから、市場規模は50億ルーブル程度と試算されています。また、専門家によると、市場規模はここ3〜5年で20億ルーブル程度まで成長すると見られており、これは年率+40%の成長率です。

 出典:エクスペルト紙から試算

 

ロシアで遠隔医療の技術が必要とされ、発展してきている分野としては、大きく分けて以下の4つが挙げられます。

  • 時間外診療、救急医療
  • 小児医療(特に生まれて1年目は、医師への相談機会は多いが、通院する必要がない場合も多い)
  • 慢性疾患患者の経過観察(通院にかかる費用と労力をかけたくないという意思が働き、患者が診察に来ずに重症を引き起こすことがある)
  • セカンドオピニオン

実際に、小児科医に特化した遠隔医療サービスの「Pediator24/7」への問い合わせにも、その傾向を見ることができます。

出典:モバイルメディカルテクノロジー

 

▼「Pediator24/7」 の詳細はこちら

russiabuzz.hatenablog.com

 

 

現場の医師たちも遠隔でコンサルティングする事に関しては、概ね理解を示しているようです。医師たちによるクローズドなネットワークサイト「Doctor at  Work」が25,000人医師を対象にしたアンケート調査によると、回答者の70%が妥当性の検討には準備があるとし、メリットを感じられないと答えたのは7%にとどまりました。

出典:Doctor at Work

 

また、65%以上が遠隔でのコンサルティングに対して、反対しないと回答しています。一方で、反対した医師の多くが、外来診療なしでの診察に難しさを感じているようです。

出典:Doctor at Work

 

これには、ロシア特有の事情が関係しているかもしれません。アンケート回答者の75%が診察室以外(ほとんどが電話ではあるが)で、患者とコミュニケーションしている事がわかりました。実際、私もかかりつけの医師とはViberで常に連絡が取れるようになっています。

▼かかりつけ医とはメッセンジャーで繋がっており、色んな事を質問できる

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 一方で、アンケート結果からは、実際に遠隔でのコンサルティング経験があると答えた医師は、全体の21%にとどまりました。現場では、医師と患者の遠隔のコミュニケーションが成り立っているにも関わらず、遠隔でのコンサルティングというと、回答率が下がるのは、遠隔医療に対する正しい認識の問題も含まれているのかもしれません。

出典:Doctor at Work

 

ロシアにおける遠隔医療のプレイヤーは大きく分けて、以下の3つに分けられます。

  1. IT企業(遠隔医療に特化したプレイヤーと大手IT企業の1サービスに分けられる)
  2. 国立病院、私立病院、各種医療機関
  3. 保険会社 

現在、遠隔医療における契約形態は、サービスプロバイダー(1.のIT企業)と医療機関のBtoB契約になります。医師と直接の契約を結ぶことはありません。医療機関はサービスプロバイダーとの間で手数料のやりとりを行います。サービスプロバイダーは、基本はプライベートクリニックとの契約を好みます。公立の病院に比べ、意思決定のスピードが早いからです。

 

また、保険プランの一部に遠隔での医療コンサルティングをサービスとして導入する、保険会社が出てきています。年間5~7,000ルーブルの保険料で、提携の医療機関から何度でも遠隔医療コンサルティングを受けることができます。専門の医師への診察を希望すると、外来で1回2,100ルーブル、通常の遠隔医療コンサルティングであれば800ルーブルがかかります。これに目をつけた保険会社が、他者との差別化で遠隔医療の分野に進出してきています。

▼「VTB銀行」は子供向けの個人加入保険に遠隔医療コンサルティングのサービスを組み込んでいる
5,900ルーブルプラン:初診科の先生からコンサルティングを受けることができる
12,900ルーブルプラン:専門の先生からコンサルティングを受けることができる

www.vtbins.ru 

 

▼「ルネサンス保険」は「ドクトルリャダム」と提携して、個人加入保険の購入者に初年度は無料で遠隔医療コンサルティングのサービスを提供する

www.renins.com

 

上記は、任意医療保険ですが、今後、遠隔医療コンサルティングに強制医療保険の適用が検討されるようになれば、大きく市場が拡大していくことが予想されます。そうなると、今後は国立病院でも遠隔医療コンサルティングの導入が進む可能性があります。

出典:BusinesStat

 

 今後も成長が期待されるロシア遠隔医療ですが、今回の法案成立を受けて、成長が鈍化するのか、それとも明確な指針が示された事によって、参入プレイヤーが増え、市場は拡大していくのか。今後の動向が注目されます。

 

次回は、遠隔医療のITプレイヤー達を紹介します!

 

参考記事→

vc.ru

 

ロシア個人旅行にオススメ観光系WEBサービス

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意外と知られていない
ロシアの観光産業

エネルギー大国のイメージが強いロシアですが、実は大きな観光産業を持っていることを知っていましたか?


日本政府観光局によると、2015年、ロシアの外国人旅行者の受入数は3,135万人で世界10位でした。インバウンドが騒がれる日本の2,404万人(2016年)と比較しても、ロシアの観光産業は十分に大きな市場と言えます。

出典:日本政府観光局(JNTO)

 

一方、2014年に国連観光機関で実施された調査では、ロシア人旅行者が海外で使う金額は、日本では旅行好きのイメージがあるフランス人やオーストラリア人を抜いて、世界5位の504億ドルであり、ロシア人のアウトバウンド旅行も非常に大きな市場です。

 
ちなみに、私が住むサンクトペテルブルクは、2年連続「ヨーロッパで最も行きたい都市」に選ばれているロシア最大の観光都市です。

出典:Zdanie.info(https://zdanie.info/2393/2467/news/9379

 

不動産情報のZdanie.infoによると、2016年、外国人旅行客と国内旅行客を合わせた観光客数は700万人を超えました。2014年のルーブル暴落後、ロシア人の海外旅行者数は激減し、一方で、国内旅行者数は2015年から大きく伸長しました。また、国内旅行者増加の影響を受けて、チケット・ホテル、パッケージ旅行予約のオンライン化が進んでいます。観光産業にIT化の波が押し寄せており、周辺ITサービスも盛り上がりを見せています。

出典:Data Insight

 

また、Airbnbロシアが発表した報告によると、2016〜2017年にかけてAirbnbロシアの流通総額は$32Mでした(日本のAirbnbの74億円程度)。これは、ロシアのホテル・アパートメント宿泊業(民泊を除く)の市場規模が$36B(2130億Rub:2016年)であることと比べると、まだ1%未満のシェアとなっており、今後も大きく規模を伸ばしていくと考えられます。

▼ロシア・日本Airbnb比較

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出典:泊まログ(http://tomalog.jp/airbnb/airlabo/

 

観光系Webサービス

2017年から日露間でもビザ発給が緩和され、また、2018年は「日本におけるロシア年」の開催が決まっており、今後はロシアに旅行する日本人も増えていくことが予想されます。これからロシアへ旅行される方は、整備されつつある観光系のWEBサービスを賢く使って、旅行を満喫してみてはどうでしょうか。

 

tvil.ru

tvil.ru

 ロシア版Airbnbのtvil.ruは2011年にサイトをオープンしました。Airbnbとの相違点は、ユーザーに予約手数料が発生しないことです。ロシア国内ですでに50,000件の物件掲載があり、特にソチなどの黒海沿岸地域のリゾートホテルにおける掲載数が多いのが特徴です。

 

tutu.ru

www.tutu.ru

tutu.ruは2003年創業のITベンチャーで、国内外の飛行機·鉄道·ホテル·ツアーのオンライン予約プラットフォームを運営しています。月に1,350万人のユニークユーザーがサイトを訪問しており、名実ともにロシア最大のブッキングサイトです。現在は各交通機関のサイト上でオンライン予約が可能になり、競争環境は厳しくなっていますが、返金対応がネット上で完結できるなど、細かいサービス対応で、優位性を保っています。

 

2гис(2gis) 

2gis.ru

以前にも紹介した、2gisはノボシビルスク発のITベンチャーで、地図アプリを提供しています。地図アプリだとGoogle Mapなどがロシア国内でも利用可能ですが、2gisの素晴らしい点は建物の入り口も正確に表示してくれる点。また、飲食店などの店舗情報も頻繁に更新され、営業時間や、クーポン情報などを知るにも便利です。2gisは調査員のフィールドワークによってデータ収集をしており、ロシアに最適化された非常に高いユーザビリティを誇っています。

シベリア潜入編はこちら

russiabuzz.hatenablog.com



Taxovichkof 

taxovichkof.ruサンクトペテルブルクのタクシー配車アプリであるTaxovichkof は、2014年創業のスタートアップ企業です。初乗り33ルーブルという低価格の実現と、車内でのwifiや充電の提供など、サンクトペテルブルクならではの旅行客向けのカスタマーサービスで、業界を牽引するポジションにあります。

 

beep car

beepcar.ru近郊都市への移動には、ライドシェアアプリを利用する方法もあります。beep carは、2017年2月にMail.ruグループが発表したライドシェアサービスです。すでにジョージアウズベキスタンでも利用できるようになり、その規模を拡大中です。目的地には近日開催されるイベントも入力することもできます。アルファ銀行系列の保険会社と提携を結んでおり、サービス利用時に自動的に保険適用されるようになっています。

 

Whizzmate

https://png.cmtt.space/paper-media/26/4b/57/63f905f1566c63.png

Whizzmate
Whizzmateは海外旅行の際のコンシェルジュサービスを提供しています。1日3.95ドルから利用でき、ロシア人の英語話者が電話で、ユーザーの様々な質問に対応してくれます。チケット予約や、現地のロシア人との電話での代理交渉などに重宝します。

 

Timescenery

time.scTimesceneryはブッキングとSNSを組み合わせたトラベルサービスです。WEB上で、他人が組んだ旅行プランを参照し、そのまま予約することできます。旅行プランを公開した人は、本来であればTimesceneryに入るはずであった、代理店や航空会社からの予約手数料の70~80%をキャッシュバックとして受け取れる仕組みです。旅行上級者向けのサービスですが、旅行代理店にはないようなプランも公開されており、一見の価値があります。          

 

 

2014年からのルーブル安は2017年の現在でも続いており、来年のサッカーW杯に向けて、さらに観光客が増えていくことが予想されます。インフラの整備が進むことにあわせて、ITスタートアップ業界でも、外国人向けの新しいソリューションが生まれてくるでしょう。日本も2020年に東京五輪が控えています。日本もロシアの観光産業から学べる所はあるでしょうか。

 

参照記事→

www.rbc.ru

ロシアのベンチャー投資市場

https://habrastorage.org/getpro/geektimes/post_images/96f/cc7/787/96fcc7787083268247554c5400a734ee.png

 

近年、日本では、いわゆるアベノミクス第三の矢として成長戦略が掲げられ、イノベーションの創出やベンチャー企業支援が進められて来ました。2016年の国内ベンチャー投資が前年比2割増の2,100億円を記録し、初めて2,000億円を突破しました。

www.nikkei.com

 

今回は、ロシアにおけるベンチャー投資について、概観してみたいと思います。

 

マクロ経済の影響色濃く

ロシアベンチャーキャピタル協会(RVCA: Russian Venture Capital Association)の調査によると、2016年のロシアにおけるベンチャー投資件数は、昨年対比+10.5%の210件で、投資金額は前年の85%にあたる$128Mでした。投資件数は2013年から基本的には増加傾向となっています。

 


出典:「RVCA」

 

▼ロシア初のベンチャー投資専門機関「Russian Venture Capital Association」

  • 1997年に設立
  • ヨーロッパの「Invest Europe」、「National Venture Capital Assocition」に加盟
  • 主な活動は、イベントの開催、専門家の育成・ベンチャー企業とのマッチング、各種リサーチの提供

www.rvca.ru

 

2013年から投資件数が急激に伸びている背景には、プーチン大統領の発案によって設立されたインターネットイニシアティブ開発基金」(iidf:Internet Initiatives Development Fund)の影響があります。主に、シードステージ・アーリーステージの企業を投資対象とする政府系VCファンドで、毎年80社程度に投資し、ファンド総額は60億ルーブルです。

 

▼「Internet Initiatives Development Fund」

  • 2013年設立、ファンド規模60億ルーブル、累計投資企業270社
  • 投資ポートフォリオ プレシード 193社、シード 13社、ラウンドA 3社
  • 12の地方拠点有り、各種アクセラレータプログラム開催

www.iidf.ru

 

また、2012年はロシア版シリコンバレーのスコルコヴォが創設された年であり、当初は潤沢な資金が投入されましたが、2014年の経済危機を境に市場におけるベンチャー投資額は低迷を続けています。これを受けて、一回の平均ディール額も2016年は$60万となっています。

 

政府主導のベンチャー市場

ロシアのベンチャー投資市場においては、どのような分野の投資案件が多いのでしょうか。

 


出典:「RVCA」

「RVCA」の調査によると、全体の7割近くがIT・通信系の投資案件であることがわかります。また、近年は医療分野やロボット産業への投資も増えてきています。

特にICT分野における投資案件の内訳として、最も多いのがビジネスソリューションの分野です。次いで、近年、数は減少しているものの、Eコマース、教育、広告分野への投資が多くなっています。一方、ここ数年増えているのが、キュレーションサービス・プラットフォームへの投資です。2016年は16件、$11Mが投資されました。

 


出典:「RVCA」

 

ロシアのベンチャー投資における一つの特徴として、政府系ファンドの投資案件の多さが上げられます。2013年には、投資案件の43.5%が政府系ファンドから投資を受けています。

特に、バイオ/医療、産業技術系の投資案件に関しては、2013年はほぼ100%政府系ファンドが投資しています。近年は、この政府系ファンドの投資案件数は、徐々に減ってきており、また投資分野もIT・通信分野への投資数が多くなってきています。


出典:「RVCA」

 

 

出口戦略

ロシアベンチャー市場において、最も問題とされるのが出口戦略です。日本のマザーズやJASDAQのように、新興企業向けの株式市場がない為、事実上、ロシア国内におけるIPOの可能性はないと言っても過言ではありません。

これらの状況から、ベンチャー企業にとってのExitは必然的にM&Aや事業売却が中心になります。2016年Exit件数は34件でした。件数自体は直近3年間で右肩あがりではあるものの、Exitにかかる金額は、2016年は前年の69%にあたる$590Mです。平均の売却金額は年々減少傾向にありベンチャー投資金額全体も減少傾向にあることから、しばらくは苦しい状態が続くと思われます。


出典:「RVCA」

 

また、外資系ファンドからの投資件数、金額、ともに減少傾向であり、ロシアのスタートアップが国外に出口戦略を見出すために、米や欧州に拠点を移す事例が多くみられます。私のいるサンクトペテルブルクでは主にバルト三国や東ヨーロッパに会社登記をして、開発チームだけをロシアに残すスタートアップが多くなっています。

 

世界における
ロシアベンチャー市場

やはり、世界のベンチャー市場と比較すると、ロシアのベンチャー投資は遅れていると言わざるを得ません。一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの調査によると、世界で最もベンチャー投資が進んでいる米国、欧州に続いて、中国でもベンチャー投資市場が大きく成長しており、2015年には投資社数が3000件を超えています。また、冒頭でもあったように、市場が拡大してきており、2015年の投資金額は$1.16Bと、ロシアの約7倍の規模でした。

 


出典:「一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター

 

現状ではロシアのスタートアップは政府系ファンドからシードマネーを調達し、早々に海外に拠点を移し、海外でリスクマネーを調達することが得策と言わざるを得ない状況です。そういった意味では、日本市場から大手企業がオープンイノベーションなどの枠組みで、ロシアの優れたスタートアップに投資をし、日本市場や世界市場に展開していくという方向性はあると思います。

ロシアでLineが使えなくなった本当の理由とは

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ロシアで「Line」
が使えない?!

 

2016年11月にロシアで「LinkedIn」が使用停止になった報道は、日本でも驚きを持って迎えられたと思います。

 

wired.jp

 

それが今度は、「Line」も使用禁止になるというニュースが出ました!!!

meduza.io

ロシアの通信規制当局(Roskomnadzor)の発表によると、メッセンジャーappの「Line」 、「BlackBerry Messenger」、「Imo.im」、ビデオチャットの「Vchat」が今回は対象です。規制理由は、上記の4サービスが、「情報発信者としての登録を拒否した為」となっています。

ロシアの通信規制当局Roskomnadzor

https://rkn.gov.ru/

 

 

そもそも、なぜロシアはこれらのSNSメッセンジャーappを使用停止にするのでしょうか。事の発端は、2014年に制定された連邦法第242-FZ号「情報・電子通信ネットワークにおける個人情報の処理手続きの適正化に関する一部のロシア連邦法の改正について」で、従来の個人情報の取り扱いについて、法改正された事がきっかけです。

個人情報の国内管理規制

企業等が取得した個人データをロシア国内にあるサーバーで保管し処理すること(データローカライゼーション)を義務付ける法律(2014年7月21日付連邦法第242-FZ号「情報・電子通信ネットワークにおける個人情報の処理手続きの適正化に関する一部のロシア連邦法の改正について」)は、ロシア個人情報保護法を含む3つの連邦法の改正法として、2015年9月1日に施行された。同改正法では、ロシア国内の事業者(外資系企業の現法、支店および駐在員事務所を含む)および海外の事業者であっても、ロシア国内向けのウェブサイトを通じて個人情報を収集する者(オペレーター)は、ロシア国民の個人情報をロシア国内で保存、管理しなければならない。また、オペレーターは、個人情報(ロシア国民のものであるか否かを問わない)を処理するサーバーの場所を含む通知を通信・情報技術・マスコミ監督庁(Roskomnadzor)に提出しなければならない場合もある。

出典:JETRO外資に関する規制」

 

ロシアの通信規制当局(Roskomnadzor)のサイトでは、ドメイン、URL、IPアドレスのいずれかを入力する事で、サイトへのアクセス制限を見る事ができます。

 

▼入力画面

検索窓にドメイン、URL、IPアドレスのいずれかを入力する

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▼検索結果:「linkedin.com」

「LinkedIn」はモスクワ地方裁判所の決定により、条文15.5が適用されている。
条文15.5は「個人情報に関する権利侵害」。

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▼検索結果:「line.me」

「Line」の場合は「Roskomnadzor」によって法が適用されています。
条文15.4は「インターネット上の”情報拡散事業者”登録」。

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「Roskomnadzor」によると、「情報拡散事業者」の定義は1日に300,000人以上のユーザーからアクセスを受けるサイトを指します。そして、「情報拡散事業者」は連邦政府の有するレジストリに登録しなければいけません。これは、「Roskomnadzor」のサイトから自身で行うこともできます。今回、「Line」が利用停止にあったのは、この登録を拒んだ為ということになります。「LinkedIn」がロシア国内で利用できないのとは、少し事情が異なります。

 

この「情報拡散事業者」レジストリには、ロシア初のグローバル出会い系サイト「Badoo」や、「Yandex」「Mail.ru」「VKontakte」「Rambler」のようなロシアIT企業の雄、そしてIT系メディア「habrahabr(露:Хабрахабр)」「Roem」なども登録しています。

 

 

検閲と戦う「RosKomSvoboda」

禁止サイトや「情報拡散事業者」登録は、「RosKomSvoboda」のサイトから見る事ができます。

▼「RosKomSvoboda

rublacklist.net

 

RosKomSvoboda」は2012年に連邦政府による禁止サイトの一括管理(「サイトブラックリスト」)が決まってから、創立された民間機関です。規制当局である「Roskomnadzor」への対立機関として、その名前が付けられました(ロシア情報通信の”自由”の意)。現在は、個人情報にかかる権利保護と、不当にブロックされたサイトのオーナーの擁護活動を旗印に、IT業界に関わる法制定・規制制度のモニタリングと、サイトブロックへの反対活動を行なっています。また、各種統計や分析も見る事ができます。

 

▼ブロックサイトの摘発機関別割合

統計からは、摘発機関のうち、全体の35.8%を裁判所(青部分 露:Суд)、31.6%を税務庁(緑部分 露:ФНС)が占めている。「Roskomnadzor」は全体の9.9%に過ぎない。

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出典:RosKomSvoboda」

 

また、ロシアにおけるインターネット検閲の歴史も振り返る事ができます。

 

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日本ではロシアにおける外資のITサービスが利用停止のニュースは、ロシア対外資の文脈で報道される事が多いですが、それよりもロシア国内における検閲問題や報道規制などの、「表現の自由」「国家の個人情報管理」の問題が外資のITサービスにも影響を及ぼしていると捉える方が自然のように思います。

 

ロシア国内のIT企業は2014年の改正法制定に合わせ、大手企業も着実にレジストリ登録に取り組みました。また、Googleを始めとする大手の外資系IT企業も、2015年の改正法施行後、ロシアのサーバーにデータを移転する発表をしました。

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出典:ロシアNOW

 

 また、ロシアにおけるITパークもクラウドサーバーのサービス利用を推奨しており、2015年の改正法施行前の時点ですでに5,000社の申し込みを受けていると発表しています。

 

国内外の大手IT企業はロシア政府の法改正に反対しながらも、柔軟に対応しており、今のところサービス停止になっているのは数社程度です。「LinkedIn」もMicrosoftを通して、当局側とコンタクトをとり、サービス復活を検討しているとも言われています。

 

とはいえ、外資系のIT企業にとっては、データ移転に関するコスト増は避けられません。

主にサーバおよびストレージ・システムの購入、エンジニアリング・サービス、またデータ保護設備、通信チャネル設備、ソフトウェア・ライセンスの購入などの費用だ。ロステレコムと契約を結んだグーグルの場合、自社サーバ用スペースの賃貸契約額が月10万8000ルーブル(約20万2000円)である。このような大手企業は、数百台から数千台のサーバを必要とするという。

出典:ロシアNOW

 

また、昨年外資のIT企業が提供するWeb上のコンテンツ(オンラインゲーム、音楽、データベース、CRM、検索サービス、ホスティング電子書籍、動画、画像)に関しても、付加価値税を課税するという法律が制定され、Google付加価値税の18%分を上乗せするという文面をクライアントに送っていた事がわかりました。

 

上記のブロックサイトの摘発機関において、全体の30%が税務庁である事からも、今後は税制面でも外資のIT企業に関しては、規制が強まっていく事が想定されます。

 

 

今までのロシアにおけるインターネット検閲と外資規制の歴史と現状を鑑みると、今回の「Line」の一件は、単にサイトがブロックされたのではなく、ロシアは「Whatspp」「Viber」の利用者が多く、またVKの創設者であるPavel Durovが開発した「Telegram」の利用も広まりつつある中で、サーバー移転費用や今後の課税問題と、市場における競争環境からビジネスジャッジとして、「Line」がレジストリ登録を拒否したのかもしれません。

 

ロシアのVR市場を牽引する「Fibrum」

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ロシアにおけるVR市場

2015〜2016年にかけて、「AVRA」(Association of argmented and virtual reality)の調査によると、ロシアにおけるVR/ARのベンチャー投資金額は、200万Rubから700万Rubに成長しました。これは、世界のVR/ARのベンチャー投資金額(1200万USD)の約0.5%に当たります。一社当たりの投資金額は15,000~250万USDでした。2017年には投資金額がさらに2倍に成長すると見込まれています。

▼「AVRA」(Association of argmented and virtual reality)
個人と民間企業からなるロシアのVR/AR業界における非営利団体。会員からの年会費によって賄われており、各種イベントの開催やレポートの発表、会員同士のネットワーキングを行っている。

ar-vr.org

 

また、MOMRI」(Modern Media Research Institute)の調査によると、2016年、VRの消費市場としては、製品(HMDやモーションコントローラ)、ソフトウェア開発、VRコンテンツが12億Rub、ビジネスの現場におけるVR技術を用いたソリューションは3億4820万Rubでした。これは、2015年と比較すると3,8倍の成長率です。

▼「MOMRI」(Modern Media Research Institute)
マスメディア系リサーチ会社。2016年に他メディア企業と共に「VRコンソーシアム」を立ち上げる。

MOMRI — Институт современных медиа

 

また、同調査において、2020年までにロシアにおけるVRの利用者は、現在の56万人から541万人まで増えると推測されることが、報告されています。 

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2015年から2016年にかけてロシアにおけるVR/ARの企業数は60社から183社へと大きく数を伸ばしました。そのうち、2/3がモスクワを拠点とする企業となっています。また、企業の規模としては社員数が20人以下のスタートアップベンチャーが多くなっています。ビジネスの現場にVRソリューションを持ち込んでいるチームの数は、300チーム以上になっています。

 

2016年は、ロシアの大手企業も相次いでVR事業への参加を表明しました。代表的な企業としては、Сбербанк, "СИБУР", Росатом, "Газпром"があります。また、2016年9月にはMail.ru GroupもVRゲームのプロトタイプを発表しました。

 

 

VR技術の成長分野

新聞社「Business Petersburg」のインタビューの中で、Oleg Kelnik(Planoplan共同創業者)は、「不動産業界ではデベロッパーがVRの導入を始めている。主にデザイン・設計と、建物のデモンストレーションでだ。一般消費者向けはまだ技術自体が高すぎる」「2017年末に向けて、警備・セキュリティ業界における人材育成にVR技術が生かされる」と答えています。

▼「Planoplan」
2Dの設計図からVR上で部屋を再現し、インテリアの配置をデザインするソフトを開発している。

planoplan.com

 

2015年にVRソリューションが活用された市場としては、広告・マーケティング分野でしが、2016年になると、教育・娯楽分野、不動産分野でのVR技術の活用が盛んになりました。今後は、エンターテイメント・娯楽分野(アトラクション、ゲーム、360°映画)、教育分野(企業研修など)が成長すると見込まれています。

 

2016年、ロシアの大手VCである「Sistema VC」は、教育系VRを提供する「MEL Science」に投資しました。

▼「Sitema VC」
モスクワに拠点があるVC。Ozon.ru、YouDO、NFWare、VisionLabsなどに投資している。画像認識や自然言語解析、VR/AR技術に注力している。

Sistema Venture Capital (Sistema_VC)

 

▼「MEL Science」
VR技術を活用した子供用化学実験キットのサブスクリプションビジネス。2016年に「Sistema VC」から$2.5Mの投資を受けている。

melscience.com

 

ロシアのVRを牽引する「Fibrum」

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FIBRUM Virtual Reality · Fibrum

FibrumはモバイルVRのハードウェア開発と、VRコンテンツ・ソフトウェア開発の会社です。創業は2014年で、現在は35人のチームを抱えています。自社開発のモバイルVR「Fibrum Pro」は、米:AmazonBestBuy, Bluewire、欧:Media Markt, Müller, Gravis、露:М.Видео, Связнойで購入することができます。また、BtoC市場だけでなく、民間企業や政府系の開発案件も受託しています。

▼「Fibrum Pro」サイト上で$49で購入可能

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Fibrumは、2014年カザンで行われたSEOカンファレンスに参加して、「Fibrum Pro」を紹介して、脚光を浴びました。

VII SEO конференция / SEO conference - Казань, 29-30 сентября 2016 год

 

 

2015年には、GoogleとAliExpressからも表彰を受け、その年にSkolkovoレジデンツになっています。2015年に開催されたSkolkovo主催の「Startup Village 2015」においてBest Global Startup賞を受賞しています。また、先日ご紹介したHigh School of Economics主催の「Startup of the Year」においても2015年度のハードウェア賞を受賞しています。

▼「Startup of the Year」とは

russiabuzz.hatenablog.com

 

 

Fibrumは2016年から、ハードウェアの開発・販売からソフトウェア開発の方に事業を ピボットしました。すでに30種類程度のVRアプリを制作・販売していましたが、VRアプリの開発者とユーザー、そしてVR製品のメーカーをマッチングするプラットフォーム「Fibrum Platform」を展開しました。現在はソフトウェアからの収益が全体収益の50%を超えています。

▼「Fibrum Platform」

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FIBRUM Virtual Reality

 

 マネタイズ方法もユニークで、2017年には「Fibrum Game Cards」というサブスクリプションモデルをローンチしています。このカードを購入しプロモコードを先ほどの「 Fibrum Platform」でアクティベートすることで、Fibrumのアプリを無料でダウンロードすることができるようになります。料金設定は以下の通りです。

  • $4.95/30days
  • $9.95/90days
  • $17.95/180days

▼「Fibrum Game Cards」

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また、上記のカード以外にも「Best VR attructions」カード($4.95)や、「Best VR Apps for children」カード($9.95)など、ジャンルごとにも様々なカードを販売しています。

 

Fibrumのこのマネタイズ方法は、特にギフト商戦において成功しました。2016年のクリスマス時期のアプリダウンロード数が昨週対比で、Google Playで218%、AppStoreで448%を記録し、年末商戦と合わせると93万ダウンロードを記録しています。「Fibrum Pro」と「Fibrum Game Cards」を合わせても、$70以下ですから、素晴らしいマーケティング戦略だと思います。

 

Fibrumは昨年度のCESやSXSWにも積極的に参加しています。ソフトウェア販売に関してはすでに海外からの売り上げが80%を超えています。「Fibrum Pro」だけですでに30,000台以上販売しており、アプリのダウンロード数は1800万ダウンロードを記録しています。

 

画像加工アプリの「Prisma」など、ロシアでは画像認識・モーション認識 の技術が伸びてきているように思います。今後は、VRもオンライン上で完結するものではなく、モーションコントローラと組み合わせた形や、AR技術の発展が期待されるのではないでしょうか。

 

参考記事→

www.forbes.ru

 

 

 

「Startup of the Year 2016」(3) ~ソーシャルスタートアップ・オーディエンス部門~

最終回は、”Startup of the Year 2016”のソーシャルスタートアップ賞と、オーディエンス賞を紹介します。

 

 

 

ソーシャルスタートアップ賞:UNA

www.unawheel.ru

 

Supreme Motorsが開発した「UNA WHEEL」は、市販の車いす電動車いすに変えてしまう脱着可能型の電動エンジンです。


UNA WHEEL

 

「UNA WHEEL」の総重量は11kgで、車椅子使用者が他の人の手を借りずに、30秒ほどで取り外しできるように設計されています。脱着可能型といっても、非常にパワフルな電動エンジンで3~4hの充電によって、35km走行することが可能です。最大速度は15km/hで、車椅子の重量と合わせて150kgまで牽引できるようになっています。走行可能な傾斜角度も35°まで対応しています。

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価格も70,000Rub(約14万円)とリーズナブルです。日本で電動車いすを購入しようとすれば、大手メーカーのスズキで約30~40万円、 昨年大型の資金調達をした次世代パーソナルモビリティの開発を手がける「WHILL」は99,5万円、アメリカで開発された世界最軽量の電動車椅子「ZINGER」は19,9万円です。

▼スズキ電動車いす価格帯

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jp.techcrunch.com

 

www.zinger-japan.com

 

Supreme Motorsのメンバーは4人です(Nikolay、 Sergei K.、Sergei P.、Igori)。彼らは、2014にこのアイデアを思いつき、モスクワ国立工科大学(MGTU)と共同で約2年の歳月をかけてプロダクトを完成させました。

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www.bmstu.ru

 

現在は、ロシアで最も大きいクラウドファンディングサイトである「Planeta.ru」で、100万Rubをゴールに資金調達をしています。また、昨年からPlaneta.ru、Russian Venture Company(RVC)、EVA Investの三社が共同でハードウェアスタートアップ向けのプロジェクト「Technology Battle」を始めました。ここでもファイナリストに選ばれ、10万RubのプレミアとEVA Investとの1on1ミーティングの機会を獲得しています。

 

▼ロシアNo1のクラウドファンディングサイト「Planeta.ru」

planeta.ru

 

▼ハードウェアスタートアップ向けプログラム「Technology Battle」

promo.planeta.ru

 

ロシア連邦社会政策・労働省によると、ロシアにおける障害者用車いすの利用者は、32万人とされており、2011-2012年には国家予算における障害者への社会保障費として、4,246億Rubが計上されています。一方で、日本においては、H28の手動車椅子出荷台数は48万台(一般財団法人 自転車産業振興協会技術研究所調べ)、H27の自立支援給付金(障害福祉サービス)が9,330億円(参議院 厚生労働委員会調査室調べ)でした。

 

市場規模に関しては、ロシアに比べて、日本の方がやや大きいものの、日本では今後電動車イスは、マイクロEVに代替されるとの見方もあります。一方で、ロシアでは車いす利用者の90%がいわゆる市販の手動車いすを利用しており、「UNA WHEEL」のようなパワフルでデザイン性の高い車いすの利用者が少ない為、潜在需要はあるかもしれません。

 

しかし、ロシアの場合は歩道の整備環境が日本に比べ、圧倒的に劣悪である為、ユースケースを一般公道利用以外にも考える必要があるかもしれません。

 

何れにせよ、「UNA WHEEL」のような製品が出ることで、老人・障害者の生活にさらなる多様性と活力が生まれてくれたらと思います!

 


 

オーディエンス賞:Педиатр 24/7(英:Pediator24/7)

pediatr247.ru

 

「Pediator24/7」は、Mobile Medical Technology社が提供している小児用の遠隔医療のサービスです。24h365日、インターネット上で小児科医からのアドバイスを受けることができます。提携医療機関が24h体制で、対応してくれるようになっています。

 

ユーザーはまず、[当直医にすぐに相談]か[専門家への相談を予約]を選択します。

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[当直医にすぐに相談]の場合は一回800Rubです。

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[専門家への相談を予約]する場合には、カレンダーから日時を指定します。また、料金は専門家によって異なります。

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アドバイスは、PCブラウザ、モバイルappのどちらからでも受けることができます。また、インターネット通信の状態が悪ければ、担当医から電話を受けることもできます。

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「Pediator24/7」は小児科医に特化したサービスですが、同社が提供する「Online Doctor」は医療分野を限定しない類似の遠隔医療サービスです。

onlinedoctor.ru

 

「Pediator24/7」の創業者でもあるAleksandr Smbatyanはシリアルアントレプレナーです。他に、インターネットショッピングサイトの「Aizel.Ru」、ショッピングクレジットの「vkredit24.ru」、ファッション系メディアの「Buro24/7」を創業しており、また、医療系サービスを投資先にもつVCのGenome Venturesの創業者でもあります。

Genome Ventures

「Pediator24/7」もGenome Venturesから出資を受けています。

 

「Pediator24/7」の創業は2013年です。子供の成長に関する母親たちの相談をすでに12,000件以上受けています。その相談のほとんどが、「子供に何を食べさせるべきか」というもので、相談の85%はモスクワ、サンクトペテルブルクを除くロシアの地方都市からのものだそうです。

 

「Pediator24/7」は今後、障害者児童向けの医療サービス展開と、人工知能を活用したBotによる遠隔診療の開発を行っていく予定です。

 

 

ヘルスケア分野に特化したVCのRock Health社のリサーチによると、2016年のロシアにおける*eHealthサービス市場は昨年対比+19%の成長をみせています。ロシアのプーチン大統領も今後2年間で、全ての医療機関をインターネットで接続し、遠隔医療に力を入れていくと発言しています。4,000人のロシア人を対象にしたアンケートでは、実に回答者の40%以上がすでに何らかの形でeHealthサービスを利用したことがあるとわかりました。

*情報通信技術を積極的に医療に導入することで個人の健康を高める仕組み。

rockhealth.com

 

市場の拡大に伴い、プレイヤーも多様化しています。「Pediator24/7」や「Online Doctor」以外の遠隔医療プレイヤーとしては、以下の企業が挙げられます。

▼「ONDOC」
個人の医療データを集約し、診察や処方に役立てる

ondoc.me

 

▼「Welltory」
個人の健康に関するアドバイスがもらえるモバイルapp

welltory.com

 

▼「Doctor at Work」
医者の為のネットワークサイト

www.doktornarabote.ru

 

▼「Helfine Medical」
ドイツ人の医師からセカンドオピニオンがもらえる

www.helfine.ru

 

 ロシアでは2015年から遠隔医療についての議論が活発化してきています。その発端となったのは、ロシア連邦保健・社会発展省と「IIDF(Internet Initiative Development Fond )」、「IID(Institute of Internet Development)」、Yandexの三社が遠隔治療に対して異なる意見をぶつからせた事でした。ロシア連邦保健省は、遠隔治療はあくまでも、相談やアドバイス、経過観察などの領域にとどまると主張しましたが、民間三社は遠隔治療は診断や薬剤処方も含む定義であると反論しました。

 

日本における遠隔医療については、2015年の政府の方針転換を機に、一気に規制緩和の流れとなっています。

www.nikkei.com

 

ただ、ロシアの実際の医療現場においては、医師が患者から直接メッセンジャーアプリなどで相談受けるようないわゆる「黒い医療行為」が数年前から頻繁に行われており、患者を守るという意味でも、早急な法整備が求められています。

 

また、ロシアにおける遠隔医療のニーズの高まりの裏には、ロシアならではの医療従事者の賃金の安さも関係しているかもしれません。本来であれば、国民の生活を支える社会インフラに携わる者として、しかるべき待遇が守られていない現状があります。
下の図では、ロシアの医師の平均賃金は25,000Rubであり、ドイツの約1/10、アメリカの1/17の給料しかもらえていません。

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Startup of the Year 2016はいかがでしたでしょうか。今年は医療や建築など、既存の業界に最新のインターネットテクノロジーが導入され、新しい価値を生み出すスタートアップの姿がみられました。今後もこういった流れは加速していく事でしょう。

 

最後に、受賞チーム以外でも、フィナリストはスポンサーからのプレミアを受けるチャンスがあります。今年のプレミアはカシペルスキー研究所とMicrosoftが提供しました。
カシペルスキー研究所はビッグデータ解析のスタートアップ「Tusk Pro」に賞状を、MicrosoftMicrosoft Bizparkで使える12万USD相当のプレミアを、マイクロファイナンス向け信用調査サービスの「Scorista」にプレゼントしました。

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参考記事→

vc.ru

 

Денис Юдчиц, «Педиатр 24/7»: Мы решили сделать сервис для мам, который доступен круглые суткиmhealthrussian.wordpress.com

"Startup of the Year 2016"(2) ~ハードウェア・フィンテック賞~

前回に引き続き、”Startup of the Year 2016”の受賞チームを紹介したいと思います。 

 

ハードウェア賞:Apis Cor

apis-cor.com

 

Apis Corはシベリアイルクーツクで生まれた建設用モバイル3Dプリンタのスタートアップです。トラック一台で移動できる2tのモバイル3Dプリンタで、実際に住宅用建物を建設することができます。

https://d2ygv0wrq5q6bx.cloudfront.net/uploads/image/files/79525/37f36e6bce56d7a5068af8ea8b94195b73918195.gif

 

 

このユニークな技術は日本でも既にTABI LABOやGigazineを通じて紹介されています。

tabi-labo.com

 

gigazine.net

 

3Dプリンタはアーム部分と、建設用のコンクリート材を混ぜるミキサーからできています。実際の建築現場に機器を持ち込んでからのセットアップ時間はなんと30分です。現場で必要な作業員はたったの2人で、最大で132㎡の建物を建設することができます。

 

従来の建設用3Dプリンタはブロック材をプリントして、建設現場に搬送し組み上げます。Apis Corは、現場で直接建設をしていくので、納期も短く、コストも大幅に削減できることが強みです。

http://i.gzn.jp/img/2017/03/06/apis-cor/a40_m.jpg

 

動画の中では、38㎡の平屋をわずか1日で建設する様子が映し出されています。この建築費用は既存の工法で作られる一般的な箱形の住宅に比べて、1㎡単価で223ドル(約2万5000円)も安く、45%も建築コストを抑えられるとのことです。

Apis Cor 3d printer

  

創業者のNikita Chen-iun-taiはイルクーツク出身の26歳です。

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幼い頃からロボティクスに魅せられ、高校生になる前には自分で書いたFXのプログラムで、当時としては大金であった140,000Rubを稼いでいました。18歳になると屋外広告の制作をする会社を自分で立ち上げました。2014年のソチ五輪でいくつかの大きな契約が決まり、その資金を使ってApis Corをスタートしました。

 

現在チームは20人ほどで、オフィスはロシアではイルクーツク以外にモスクワがあります。また、2015年に米サンフランシスコにUSオフィスを作っています。

 

2016年2月にはSkolkovo Fund主催の"Startup Tour in Irukutsuk"で3位入賞を果たし、同年4月には同じくSkolkovo Fund主催の“Technostart-2016”で3MRubのグラントを獲得しています。

▼Startup Tour
Skolkovoが毎年開催しているビジネスコンクールです。14都市で開催され、2,000以上の応募があります。

startup-tour.ru

 

現在、パートナー企業としてSiemens Finance LtdとSamsung Electronicsなどの大手メーカーと提携しており、グローバル展開に非常に意欲的に取り組んでいます。

 

 

 

フィンテック賞:Кoshelek(露:Кошелек)

 

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https://cardsmobile.ru/

 

Koshelekは、財布に溜まりがちな銀行カードや各種割引カードなどをスマートフォン一台で持ち運びできるモバイルappです。 


Приложение «Кошелек»

KoshelekはNFC(近距離無線通信)技術を活用しており、端末にかざすだけでモバイル決済や、ポイント加算ができるようになっています。同様のサービスとして、Sumsung walletやAppleのWalletがあります。

 

Koshelekが提携しているカードは、以下の通りです。

  • 販売業者ー割引カード、プレミアム会員カード、クーポンチケット
  • 銀行ーデビットカード、クレジットカード
  • 公共交通機関ー地下鉄・バス乗車カード

販売業者との提携が始まったのは2016年からで、提携先はNikeSony、O'STIN、Samsungなどのグローバルメーカーをはじめ、M.videoなどの国内リテーラーへもサービスが拡大しつつあります。デジタル化されたカードは1,100万枚以上、ダウンロード数は300万を超えています、カード発行企業は14万社以上です。

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提携銀行は国内銀行がメインです。Bank Saint Petersburg、Moscow Industrial bank、Russian Standard Bank、Tinkoff Bankなどがあります。また、MasterCardとはビジネスパートナーシップを結んでおり、各種PRでタイアップしています。

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公共交通機関では、すでにロシア国内の20地域で導入が進められており、その中にはサンクトペテルブルクやモスクワなどの大都市も含まれています。公共交通機関の乗車カードと販売業者が提供する会員カードを一つのアプリで管理するのは技術的にも難しく、日本でもようやく2016年からApple PayによってSuicaが使えるようになりました。

style.nikkei.com

 

創業者のCyril Gorynyaは、サンクトペテルブルクのIT企業「iFREE」の創業者であり、シリアルアントレプレナーです。iFREEはモバイルコンテンツのディストリビューターとして2001年に創業しましたが、その後モバイルappやスマホゲームの開発、Web広告事業、メディア事業などIT分野での事業の幅を広げ、2014年にはロシアForbsでIT分野の6位にランキングされた大企業です。その後、ベンチャーファンドも立ち上げ、Koshelekにも出資しています。

www.i-free.com

 

Koshelekの開発ヒストリーは、実は日本とも密接に関わっています。2007年、Cyril Gorynyaはビジネス研修で来日し、その際にSonyを訪れています。その時に初めてNFC技術を紹介され、ロシアに持ち帰り6年の歳月を経てプロダクトとして、完成させました。ロシアでは2004年頃からSMSによるモバイル決済が既に始まっていましたが、2000年代にNFC技術は全く相手にされていませんでした。

 

Koshelekにとってのターニングポイントは、Apple Payがスタートした2014年でした。2013年、Apple Payがスタートする半年前にKoshelekはサービスローンチしました。NFCによるモバイル決済システムとしては、ロシアではGoogleに次いで二番目のサービスローンチでした。それまで、全く見向きもされなかったKoshelekの技術は、Appleの市場参入により、大きく注目されるようになりました。

 

Koshelekを運営するCardsMobileは、Skolkovoレジデンツであり、2016年にはロシアの大手ITソリューション企業LANITから29%の株式と引き換えに、$2.5Mの出資を受けています。これにより、現在の企業価値は$8,74Mと試算されています。

 

現在KoshelekはHTC、SonyPhilipsなどのスマートフォン180万台以上にデフォルトとして設定されており、2016年にはiOSバージョンもローンチされました。年間売上は70MRubと発表されており、今後はQiwiやYandexなどの国内決済事業者と、AppleSamsungなどのグローバルプレイヤーとも熾烈な競争を勝ち残っていかなくてはなりません。

 ▼Qiwi 
三井物産が出資した話でも有名になったロシアの決済システム会社です。

qiwi.com

 

▼Yandex Money
ロシアの検索エンジン大手Yandexが保有する決済システムです。

money.yandex.ru

 

 

 最終回は、ソーシャルスタートアップ賞とオーディエンス賞を紹介します。