"Startup of the Year 2016"発表!!!(1)
今回は、モスクワのDigital Octoberで開催された、”Startup of the Year 2016”に特派員のキリル君が参加してくれました!
”Startup of the Year”とは?
"Startup of the Year"は、2008年から始まったビジネスコンテストで、今年で9回目を迎えます。イベントの主催は、"High School of Economics"(通称HSE)という教育機関です。これは私立の大学で、MBAコースも準備しています。大学内にはスタートアップを支援するインキュベーター機能があり、Startup of the Yearはこのインキュベーターが主に企画運営しています。
▼High School of Economics
Startup of the Yearは、コンクールへのアプライから最後のビジネスピッチコンテストまで約1ヶ月の間で運営されます。流れは以下の通りです。
- HSEにコンクール申請書を提出する
- 二週間後に4つの部門毎にスタートアップ3社がそれぞれノミネートされる
(審査員、VC、個人投資家、大企業、成功しているスタートアップの代表者) - 1週間〜10日後にビジネスピッチコンテスト&受賞セレモニーが開催される
- ノミネートされた12社にはパートナー企業から賞品をもらうことができる
今回は、Microsoftからグラントで$120 тыспо программе Microsoft BizSpark。そのほか気に入ったチームには、корпорация готова подарить грант в размере $25 тыс на год.の準備がある
今年のパートナー企業は、Raiffeisenbank(オーストリア系銀行Raiffeisen Bank Internationalのロシアにおける子会社)、MTC(ロシアの大手通信会社)、PepsiCo、カシペルスキー研究所、Microsoftでした。
Startup of the Yearの過去ノミネートor受賞チームには、今までにご紹介したComfortway、YouDOも含まれており、近年ロシアにおけるスタートアップの登竜門として存在感を発揮しています。
Startup of the year 2016!!!
Startup of the Yearでは、4つの部門(グローバル、ハードウェア、フィンテック、ソーシャル)に分けて選考を行います。また、当日の会場投票でオーディエンス賞も一社選ばれることになっています。
それでは、2016年度の受賞スタートアップを紹介していきます。
グローバル賞:Statsbot
Statsbotは2015年11月創業のスタートアップで、Slackの拡張ツールを提供しています。Google AnalyticsやMixpanel、Salesforceと連携させることで、サイト解析のサマリーをSlack上に定期的に流してくれるbotサービスです。
例)Slack上に流れてくるサマリー
Statsbotのアイデアは、CEOのArtyom Keydunovの前職の経験から生まれました。彼は、遠隔でエンジニアチームと仕事をしていたことがあり、その時にあらゆるコラボーレションが生まれる場所ーすなわちSlack上にーGoogle AnalyticsやMixpanelのデータを引っ張ってこれないかと考えました。
現在チームは、10人弱まで成長し、オフィスも昨年からアメリカに移しました。
2016年にSeedラウンドで約$2Mを調達しています。インベスターの中には、500Startups やSlack Fundも含まれています。
Slack инвестировал в российский проект Statsbot и ещё 10 стартапов
利用者は順調に伸びてきており、今年2月の時点で20,000人を突破しています。法人利用としては、Vimeo、Product Hunt、Y Combinator、 Khan Academy、 NASA、Nike、 BBC、 SalesForceなどの大手企業でも活用されています。
*各種インタビューから作成
2016年6月の段階では無料プランがありましたが、2017年3月現在はフリートライアルを除き、基本は全て有料プランになっています。
↓2016年6月
↓2017年3月
Statsbotは元々、アメリカのProduct Huntで紹介されて飛躍的に認知度が上がりました。Product Huntはスタートアップが新しいプロダクトを露出する場として注目されているソーシャルニュースです。
その他にもHacker Newsや、Google Analyticsの公式ツイッターでも紹介されており、日本でもQiitaを通して紹介されています。
現在もPR戦略に関しては、コンテンツマーケティングに注力しており、自社でマーケターを抱えながら外部サイトに記事を書いてもらうことで、認知度を高めています。
今後はサービス改善にさらに力を入れ、異なるソースから集められたデータを用いて、企業にとって最適なインサイトを提供できるようにしていくとのことです。
次回は、ハードウェア賞・フィンテック賞について紹介したいと思います。
ロシアWeb4.0"Neuronet" ≪スタートアップ紹介:ビジネスプロセス最適化≫
ロシアWeb4.0 ”Neuronet”
日本でもここ数年、ニュース等でAI、機械学習、ディープラーニングという言葉をよく見るようになりました。今回は、これらの技術の中心的なアプローチとなる、ニューラルネットワークについて、ロシアの現状をお伝えできればと思います。
ニューラルネットワーク理論は、1943年にウォーレン・マカロックとウォルター・ピッツというアメリカの神経生理学者と数学者によって考案されました。ニューラルネットワークは人間の脳と同じように高度な認識・思考能力を獲得できるのではないかと、当時は期待されましたが、一方で当時のコンピューターの能力では課題も多く、限界にぶち当たってしまいました。しかし、2006年、深層学習(ディープラーニング)の理論が発表されると、従来抱えていた課題が解決され、一気に実用化へ進むようになり、第3次AIブームの火付け役となりました。
ロシアでは、1988年にロシア人口知能協会(RAAI)が設立され、現在300人以上の研究者が在籍しています。RAAIによって2年に一度、全国人工知能学会が開催されています。
ロシアにおける人工知能や機械学習を知るためには、キーワードとして"Neuronet"という言葉を覚える必要があります。これは、ロシアではWEB4.0とも言われ、2030-2040年にかけて、人間・動物・人工知能がニューラルテクノロジーを活用してコミュニケーションするステージと定義されています。
また、2009年に、政府ービジネス・研究間の相互協力について発表があり、27のイノベーション技術分野について、政府が貢献していくことが決まりました。その内の一つである”未来医療”分野において、ニューロンテクノロジーが発表されました。
2014年にロシアベンチャーカンパニー(RVK)によって、国内外の専門家が集められ、ニューロンテクノロジー・ロードマップセミナーが開催されました。同年、プーチン大統領の要請によって、ナショナルテクノロジーイニシアチブ(NTI)が設立された際に、注力していく9つの成長分野の中に"Neuronet"が組み込まれ、その言葉の定義が生まれました。
▼ナショナルテクノロジーイニシアチブ
2015年、NTIの報告の中で、ロシアにおける2035年までの"Neuronet"ロードマップが正式に発表されました。
市場規模
2016年、世界のAI技術への投資額は5億USDに達しました。4大会計事務所のEY社の調査によると、2020年までに世界の人工知能市場は、運輸分野から教育分野に至る幅広い分野において、2000億USDまで成長するとされています。
以下は2016年に、世界でAIスタートアップ企業に投資された分野別投資額のグラフです。
出典: artificial intelligence company list
一方でロシアでは、上記のNTIが策定したロードマップの中では、2016年におけるニューラルネットワークの市場規模は4億Rubとされており、2020年には440億Rubと推定されています。2035年までに世界シェアの2.5%以上を取ることが目標に掲げられています。
国策
2015年に、大統領付属ロシア経済近代化・イノベーション発展評議会によって"Neuronet"は承認されました。これは、企業と個人からなる業界団体です。
2035年までのロードマップの中で、以下の市場セグメンテーションに分けて、イノベーションを加速化させていくとしています。
- NEURO PHARMA
遺伝子療法・細胞療法
パーソナライズ化された早期予防診断
神経変性疾患の予防と治療
健全者における認知能力の向上 - NEURO MEDTECH
神経プロテーゼと人工感覚
障害者のリハビリ現場におけるニューラルテクノロジーの活用
ロボットセラピー
ニューラルインターフェースの開発 - NEURO ENTERTAINMENT AND SPORTS
脳フィットネス
ニューラルテクノロジーを活用したゲームコンテンツ・ガジェットの開発 - NEURO EDUCATION
教育現場におけるVR/AR、ニューラルインターフェースの活用
ニューラルテクノロジーの教育プログラム・製品への応用
記憶力強化の為の製品、脳の働きを分析する製品 - NEURO COMMUNICATION AND MARKETING
ニューロマーケティング
生体認証データの活用による個人・マスの消費動態の予測
意思決定支援システムの構築
感情推定技術の発展
集団行動における生体プロセスの最適化技術 - NEURO ASSISTANTS
自然言語処理技術
ディープラーニング技術の発展
ヒトと機械の電脳ハイブリッドアシスタントのパーソナライズ化
政府は、教育科学省と金融省の予算の元、NTIへ125億Rubの予算配分を行なっており、2016年に80億Rubが消化され、2017年は残りの40億Rubが使われることになっています。
イベント
人工知能の開発が進んでいるのはモスクワのSkolkovoで、主にロボティクスの分野で研究が進んでいます。定期的に開催されるSkolkovo Roboticsでは、その研究成果を見ることができます。また、ロシアの検索大手Yandexも検索技術の中で、人工知能を活用しています。以下は、ロシア国内で開催されている主な人工知能系のイベントです。
▼Skolkovo.AI
画像解析、会話AI、チャットボット、チューリングテスト、AIインターフェースデザインの5つの主なトピックで2016/11に開かれたカンファレンス。
▼AI Hackathon St.Petersburg
FlINT CAPITALが2017/03にSpBで開催したAIハッカソン。
▼EDHACK: CHATBOTS AND AI HACKATHONS CUP
2016/09に教育科学省とedXが共催したAIとチャットボットのハッカソン。
スタートアップ紹介:
ビジネスプロセス最適化
▼Digital Genius
Digital Geniusは2016年、米Forbsの«30 Under 30»にノミネートされた注目のスタートアップです。ファンウンダーのDmitry Aksenovは、当時若干23歳。独学でロボット工学と人工知能を学習し、初めてロボットを作ったのは7歳という天才児だったようです。
Digital Geniusは、企業のカスタマーサービスをAI技術を使って効率化させるアプリケーションです。
コールセンターなどに導入され、SalesForceなどのCRMから過去の顧客とのやりとりをディープラーニングによって解析します。
顧客からくる問い合わせ(メール、ソーシャルメディア、メッセージアプリ、Live Chatなど)を優先度、質問形式、状況などの5つの項目でタグ付けし分類します。
質問内容に対してAIがベストアンサーを提案してくれるので、オペレーターはそのまま返答するか、文章を一部修正して、パーソナライズするかを選択します。
また、質問に対する返答の妥当性について、%で表示されるので、ある一定値を超えた段階で、自動返答する設定をすることができ、またその基準も自由に選択することができます。
人工知能というハイテクと、オペレーターというローテクをうまく組み合わせたサービスの実現を目指しており、このシステムの導入によって、オペレーターは最大30%まで、作業キャパを増やすことができるとされています。
また、カスタマーサービス以外にも、プロモーションとしてもDigital Geniusの技術は活用されています。例えば、昨年、ユニリーバのブランドであるクノールとパートナーシップを組み、アジアおよびアフリカ市場で展開した「Chef Wendy」があります。テキスト・メッセージを活用し、消費者が自宅にある食材でより良い食事を作るようレシピを提供するサービスです。
ジョージア(旧:グルジア)との国境付近、カフカス山脈の麓の町、ヴラジカフカスで生まれたDmitry Aksenovは、2008年にロンドンへ留学します。その後、カレッジに進み、在学中に今のビジネスモデルの原型を発案します。創業は2013年、今では30人弱のチームを抱えています。2015年に$3M、2016年に$4.1Mのシード投資を受けています。ラウンドには、以前に紹介したRuna Capitalも参加しています。
オフィスはロンドンとNYにあり、Digital Geniusの他に、Fin Geniusという金融業界に特化したカスタマーサービスAIも運営しています。
インタビュー記事→
▼Behavox
主に金融業において、ビッグデータと機械学習、音声認識のテクノロジーを使い、企業内コミュニケーションにおけるコンプライアンス遵守を助ける。
▼Leadza
ニューラルネットワークを活用したFacebook・Instagram広告最適化サービス。
▼GuaranaCam
機械学習を活用したオフライン広告最適化サービス。商業施設の監視カメラネットワークを利用して、来店者の購買活動を分析する。
▼LogistiX
人工知能を活用した倉庫機能最適化。
▼BFG Soft
クラウド型プラットフォーム。ビッグデータやAIを使って、製造業における新しい設備導入や業務改善プロセスのビジュアルモデルを作成する。
ロシアでも人工知能を活用したサービスは、生まれてきていますが、世界と同様に、人材獲得競争になっています。国もプーチン大統領のイニシアチブにより、人材育成、国際競争力強化に乗り出していますが、西側との差は大きく開いているのが現状です。
今後の動向に注目したいと思います。
SPBを代表するインキュベーター”イングリア”
政争に巻き込まれたテクノパーク建設
今回は、サンクトペテルブルクを代表するインキュベーター”イングリア”を、
訪問してきました。
2008年、ヨーロッパやアメリカをモデルに、イングリアはビジネスインキュベーターの
パイロットプログラムとして、設立されました。
イングリアはテクノパークとしての顔も持っており、サンクトペテルブルク市100%出資の株式会社テクノパーク サンクトペテルブルクが運営会社です。
テクノパーク”イングリア”は、2006年にサンクトペテルブルク国立通信大学の構想によって、そのプロジェクトがスタートしました。
サンクトペテルブルクはプーチン大統領の出身都市でもあり、テクノパーク建設は彼の肝いりのプロジェクトでした。モスクワ・スコルコヴォのカウンターパートとして、建設が予定されていましたが、2015年に完成予定だったものの、未だに建設中です。
当初は、ノヴォシビルスクのアカデミーパーク等と同様に、国家予算が入って、建設される予定でした。しかしながら、その権利帰属がサンクトペテルブルク市なのか、国家なのかを巡り、裁判にまで発展しました。その結果、国家予算の編成が見送られてしまい、サンクトペテルブルク市と個人投資家による投資だけでプロジェクトがスタートしました。初期の2012年完成予定は延期され、建設会社と建設構想も幾度となく変更されました。完成予定地における住民からの土地の買い上げも遅々として進みませんでした。
300億Rub規模の大投資ですが、未だにその構想は宙に浮いたままになっています。
2016年から建設が再開され、次の完成予定は2023年だそうです。
入居条件
入居条件は、通常プログラムと通信プログラムによってそれぞれ異なります。
プログラムに参加しても、株式取得等の条件はありません。
通常プログラム 4500Rub/月
- コアワーキングスペース1席/24h 週7日
- エキスパートセッション参加/年2回まで
- VC Day・Demo Day・One-on-on meeting参加/クオーターで最低4回以上
- メンターセッション/クオーターで最低1回以上
- 会議室利用/月3hまで
- カンファレンスルーム/クオーターで1回 8hまで
- 専門家による個別コンサルティング/月3h
- パートナーネットワークへのアクセス・インターネット/無制限
通信プログラム 2500Rub/月
- コアワーキングスペース1席/24h 週7日
- エキスパートセッション参加/年2回まで
- VC Day・Demo Day・One-on-on meeting参加/クオーターで最低4回以上
- メンターセッション/クオーターで最低1回以上
- 専門家による個別コンサルティング/月1h
- パートナーネットワークへのアクセス・インターネット/無制限
- 会議室利用/1h 500Rub
- カンファレンスルーム/1h 700Rub
▼コアワーキングスペース
▼会議室
▼カンファレンスルーム
上記以外でも、入居企業は別途費用を払えば、追加で会議室の利用や、コアワーキング
スペースの席を確保することができます。また、入居企業でなくても、以下の費用を支払えば入居企業と同じようにサービスを利用できたり、イベントに参加できます。
非入居企業
- コアワーキングスペース1席/1h 150Rub
- エキスパートセッション参加/1回 5,000~9,0000Rub
- 会議室利用/1h 950Rub
- カンファレンスルーム/1h 1,500Rub
- 専門家による個別コンサルティング/1h 3,000Rub
また、月5,000Rubを支払えば、オフィスを借りることもできます。
▼オフィス
大学・企業・海外との
連携が進む
実績
2009〜2015年までにイングリア入居企業が受けた投資総額は20億Rub以上、
売上総額は30億Rubを超えます。これまでに400社以上のスタートアップや
イノベーション企業のサポート実績があります。
元々が国立通信大学の構想であり、大学との連携も進んでいます。ITMOのビジネスインキュベーターの立ち上げにも関わっています。2016年には、教育機関との連携が進むインキュベーターとしてロシア3位に位置付けられました。
また、近年では、北欧発のアクセラレータープログラムStartUPSaunaの誘致も行いました。
イベント
Startup Lynch
毎月1回、最終金曜日の昼11時から開催されるビジネスピッチイベントです。対象者は、入居企業、入居希望者など申請すれば誰でも参加することができます。5分間のピッチと、15分間の専門家からのフィードバックで構成され、毎回4〜10のプレゼンテーションが行われます。イングリアの登竜門的なイベントです。
Technology Transfer Day
年に3回行われる、イングリアを象徴するオープンイノベーションのイベントです。
こちらもビジネスピッチイベントですが、Startup Lynchとの大きな違いは、
一般企業とスタートアップのマッチングが目的であるという点です。
毎回違ったテーマで開催され、テーマに合った一般企業がパートナーを務めます。
2014年にスタートからすでに13回以上開催され、イベントを通して17の契約が
結ばれています。5分間のピッチと、5分間のFAQで構成され、10前後のプレゼンテーションが行われます。
2016年のテーマ
▼Technology for Life
▼Technology for Megapolis
▼Design Day
Startup Sauna
Startup Saunaはフィンランドで始まったアクセラレータープログラムで、2010年から
始まり、今年で7年目になります。北欧、バルト3国、ロシア・東欧を中心に14カ国・20地域で、春と秋の半年に1回ずつ地域選考が行われ、各地域上位3チームがヘルシンキで行われる7週間のアクセラレータープログラムに参加できます。アクセラレータープログラムの参加者は、Slushへの参加資格が与えられます。また、選ばれたチームはベルリン・ロンドン、シリコンバレーへのツアーに参加することができます。
モスクワの注目スタートアップWindyもStartup Saunaの卒業生でした。
イングリアでは、Startup Saunaのパートナーとなって、地域選考の運営をしています。
イベントには、フィンランドから専門家も召集し、ビジネスピッチは英語で行われます。
入居企業
イングリアのLeoとAlexseyにイングリアの中堅スタートアップを紹介してもらいました
(6~10人くらいのチームで、月商が約200万Rub)。
▼Conomy
個人のマイクロ投資向けレコメンデーションサービス。企業の営業実績や財務実績などの統計データを解析して、投資家に最適な投資先を提案する。利用料は、500Rub/月、5000Rub/年を選択できる。同社の提供する、Conomy Portfolioは自動投資ポートフォリオ作成ツール、Conomy Rightは投資ロボアドバイザーサービス(手数料40Rub/1売買)。
▼Stafory
人材採用プラットフォーム。企業の採用情報とリクルートエージェント・フリーランスのヘッドハンターをマッチングする。利用料、手数料は現在無料。同社が提供する人材採用ロボ”ベラ”は、採用情報を入力すると、インターネット上のサイトにアップされているレジュメを検索し、条件に合う候補者に自動的に連絡し、採用情報について説明する。その後、候補者は自動的に送られた採用条件の詳細を受け取り、条件が合えばビデオインタビューを受ける。すでに1,200以上のビデオインタビューが”ベラ”を通して行われ、採用実績も出始めている。
利用料は4,500〜300,000Rub(1レスポンスあたり30〜90Rub)。
イングリアは、今後イベント運営を通じて、大企業とスタートアップのマッチングプラットフォームとしての機能を強化することを目指しています。オープンイノベーションを活用した大企業との連携は、IPOの少ないロシア市場にとって、スタートアップに残された可能性かもしれません。またStartup Saunaなど、スタートアップの海外展開支援も積極的に進めており、アジア市場に関しても非常に興味を持っています。将来、日系企業がサンクトペテルブルクのスタートアップに投資する日が来るでしょうか。
参考記事→
学術都市アカデミガラドクへ潜入
ロシア第3の都市
ノヴォシビルスク
人口150万人、ロシア第3の都市であるノヴォシビルスクは、モスクワから東に3,000km、
ユーラシア大陸のちょうど中心に位置しています。
2600万人を抱えるシベリア地域最大の都市であるノヴォシビルスクは、
1920年代にロシア語で「新しいシベリアの町」を意味する今の名称になりました。
スターリン政権下の重工業政策で、シベリア最大の産業都市として発展しました。
また、シベリア最大河川のオビ川が流れ込む地域でもあり、シベリア鉄道の発展と共に、
運輸拠点としての役割も果たしています。
ノヴォシビルスク発IT企業といえば、ジオロケーションの”2gis”、オンラインゲームの”Alawar”が有名です。中でも、2gisは3,000人以上の従業員が在籍し、今でもメインオフィスは市内にある為、
雇用創出に大きく貢献しています。
Alawr
2гис(2gis)
学術都市アカデミガラドク
アカデミガラドクはノヴォシビルスクの中心地から南東に30km離れた場所に、
森を切り開いて建設されました。ロシア語で「アカデミーの町」の意であり、
日本でいう研究都市・学術都市にあたる計画都市です。
筑波研究学園都市のモデルになったともいわれています。
Академгородок | Официальный сайт Новосибирска
現在、アカデミガラドクには13,000人の科学者が在籍しています。
周辺にはロシア科学アカデミーに在籍する38の大学、シベリア科学アカデミーに在籍する
8つの大学、18のマルチアクセスセンター、6つのインターナショナルリサーチセンターが
あり、研究分野での協力体制が進んでいます。
中でもノヴォシビルスク国立大学は、ロシア大学ランキングでも10位以内の優秀な大学です。
НГУ | Новосибирский государственный университет
敷地内には住居エリアもあり、科学者が集中して研究できる環境が整えられています。
アカデミガラドク内には、テクノパークであるアカデミパークがあります。
アカデミパークは2006年に建設され、その建設費用は200億ルーブル以上と言われています。
アカデミパークは、主に4つのクラスターから成り立っています。
- エンジニアリング
- ITテクノロジー
- ナノテクノロジー
- バイオテクノロジー
Главная страница — Инкубатор Академпарка
研究・教育・ビジネスをシームレスに
今回は実際にアカデミパークの運営会社、株式会社テクノパーク(ノヴォシビルスク州が100%出資)の方々にお話を聞いてきました。
アカデミパークが目指しているのは、”研究”・”教育”・”ビジネス”の有機的なつながりです。
例えば、大学の卒業生達にはアカデミパークに入居する企業に就職する、もしくは自分たちでスタートアップを始めるというキャリアパスが用意されています。また、企業サイドのニーズを受けて開発された
技術は、パイロットテストを経て、OEM製造まで一気通貫で実用化の道を辿ります。アカデミパークではリサーチセンター、大学、企業の横のつながりを生かして、イノベーション技術の実用化を進めています。
アカデミパークの入居企業数は350社、そのうちビジネスインキュベータープログラムの参加企業が130社です。アカデミパーク入居企業の年間売上総額は、約200億ルーブルで、9,000人の雇用を生んでいます。これは国家プログラムで運営されている12のテクノパークにおいて24%の売上シェアを占めています。
▼入居企業例
KliChat
メッセンジャーアプリ、ビジネスプロモーション向けメッセンジャー
Gransjoy
CtoC海外配達サービス
また、アカデミパークはヨーロッパビジネスネットワーク(EBN)の一員であり、
国際テクノパーク協会にも属しているので、世界的なネットワークを有しています。
アカデミパークの入居企業になるには、ノヴォシビルスク州に登記のある法人ないし個人事業である必要があります(外国企業でもOK)。書類審査を受けなければいけませんが、必ずしもオフィスを借りる必要はありません(ここは、モスクワの Skolkovoレジデンツと似ています)。
大きいオフィスを借りるなら、アカデミパーク内の建物で1フロア〜から借りることができ、小さいオフィスはメインビルディングであるITセンターの中で25㎡〜から借りることができます。また、ITセンターの中には、コアワーキングスペースがあり、これは月$15から借りることができます。必ずしも入居企業である必要はありません。
テクノパークでもあるアカデミパークは、2006年からビジネスインキュベーターとしての活動を行なっていて、アクセラレータープログラムの開催、イベントやミートアップのオーガナイズを行なっています。
アカデミパーク自体はファンド運営を行っておらず、州政府のグラントやSkolkovoファンドなど、
外部の投資機関と連携して、投資プログラムを入居企業に案内しています。
例えば、アカデミパーク内には”イノベーション振興基金”の地域オフィスがあり、インキュベータープログラムの参加企業に振興基金の投資プログラムの紹介などを行なっています。アカデミパークの入居企業は、研究・開発系の企業や、製造系の企業が多いので、グラントの形式での資金調達が目立ちます。プログラムによって異なりますが、振興基金の場合、投資金額は40万〜1500万ルーブルです。
Фонд содействия развитию малых форм предприятий в научно-технической сфере
また、アカデミパーク以外にも、アカデミガラドク内にバイオテクノパークである”Koltsovo”、
ノヴォシビルスク市内に医療テクノパークがあり、ノヴォシビルスクはモスクワとはまた違った
アプローチでロシアのイノベーションを引っ張っています。
バイオテクノパーク
医療テクノパーク
IT集積地 ロシア第4の都市ニージニー・ノブゴロド
「ロシアの財布」
ニージニー・ノブゴロド
モスクワから東へ400kmの場所に人口120万人、ロシア第4の都市ニージニー・ノブゴロドはあります。オカ川とヴォルガ川の合流する地点で、昔から「ロシアの財布」と呼ばれ、
商工業で栄えた街です。
有名なロシア国産車メーカー”GAZ”の工場があり、労働人口は70万人と言われいます。
20世紀にロシアの抑圧された人々を描いた、大作家マクシム・ゴーリキーも
ニージニー・ノブゴロドの出身です。
また日本では馴染みがないかもしれませんが、18世紀の偉大な発明家イヴァン・クリビンも
ニージニー・ノブゴロド出身です。
(ネヴァ川にかかる橋、トラクター、電灯など、実に様々な発明をしています)
IT集積地としての
ニージニー・ノブゴロド
今回はITスタートアップコミュニティの運営者であるイーゴリに、
ニージニー・ノブゴロドを案内してもらい、いろいろとIT産業とスタートアップ界隈の
お話を聞くことができました。
↓イーゴリの運営するスタートアップコミュニティ
ニージニー・ノブゴロドのIT人材は約8,000人で、IT企業が360社以上あると言われています。生活維持コストが低いため、大手企業の開発部署がニージニー・ノブゴロドに
拠点を移してきており、Yandex(80人)、Mail.ru(1200ー1400人)、NetCracker(300人)、
Intel(ロシアでは唯一; 700人)などがオフィスを構えています。
40㎡の1Kなら8,000〜20,000ルーブル/月で借りることができます。
(ちなみに、ペテルブルクだと20,000〜35,000ルーブル/月、モスクワだと30,000〜65,000ルーブル/月)
ここでのIT専門家の平均月給が50,000〜60,000ルーブル、シニアマネージャーレベル(全体の10%程度)になると100,000〜120,000ルーブルになります。
ニージニー・ノブゴロドは大企業とスタートアップの関係性が非常に良く、
イベントやミートアップには、企業がオフィスを貸し出しています。
(2/12開催のセキュリティ関係のミートアップ「DEF CON ニージニー・ノブゴロド」では、Yandexがオフィスを貸し出しています)
ニージニー・ノブゴロドは2013年頃より行政がIT分野の振興に注力し始めました。
2012年末:ビジネスインキュベーターの”CLEVER”がリブランディング
Бизнес-инкубатор CLEVER
2013年:モスクワーニージニー・ノブゴロド間を4時間で結ぶ鉄道≪つばめ≫が開通
2014年:テクノパーク”アンクディノフカ”がオープン
元々は、企業のアウトソーシング先として、受託開発がメインだったニージニー・ノブゴロドのIT産業でしたが、近年はニージニー・ノブゴロド発のスタートアップも注目を集めるようになってきました。国内だけでなく、海外からも投資家がスタートアップを買収する事案が増えてきています。2016年には初めて、テクノパークにてITコンクールが開催されました。
- ニージニー・ノブゴロド発で注目を集めているスタートアップ
Idei Podarkov
ギフト特化EC
NN.RU(ニージニー・ノブゴロド オンライン)
ニージニー・ノブゴロドのポータルサイト
アメリカ人投資家に買収されました
NNOV.ORG
ニージニー・ノブゴロドのポータルサイト
EXIT済み
Adore Games
オンラインゲーム開発
Freemake
オーディオ・ビデオコンバーター
DVDVideoSoft
オーディオ・ビデオコンバーター
itSeez3d
3Dスキャニングモバイルアプリ
Mobile 3D Scanner App for iPad | itSeez3D
Intelsol
スマホゲーム
Comfortway
グローバルSIM
akogda
最新ドラマお知らせサービス
- エンジェル投資家
Eduard Fiyaksel
Eduard Fiyaksel — GVA LaunchGurus
Comfortwayの開発者たちと
前回、RSP技術を使ったグローバルSIMを開発したComfortwayを紹介しました。
今回、オフィスを訪問させてもらい、開発者のマキシム(左)とジェーニャ(右)から話を聞くことができました。
Comfortwayのプロジェクトがスタートしたのは、実際には2009年頃からでした。
このプロジェクトに関わる彼らは、企業のアウトソーシングを受けたり、他の企業に勤めたりと他にも収入源がある中で、プロジェクトを進めています。
実際、ComfortwayのSIMカード事業が始まるには、”Video Consultant”
(コールセンターのオペレーターが使用する営業ツール)というBtoB向けソフトウェアを
開発して、サービス提供していました。
Comfortwayの今のチームは15人。モスクワにヘッドオフィス機能があり、
開発がニージニ・ノブゴロド、他にも香港やチェコ・プラハにもスタッフがいます。
会社登記上はチェコ法人です。
今は、モスクワを中心に営業を進めており、世界中の通信事業者とパートナーを組み、
BtoCでグローバルSIMの販売を加速させていくとのことです。
今後の展開としては、
グローバルな競合相手を認知はしていますが、ソリューションが異なるため、
サービス認知と開発投資のスピードを上げていきたいとのことでした。
日本市場については、現在は中国の通信事業者を通している為、
料金体系が割高になっており、日本の通信事業者と直でパートナー契約を結びたい、
とのことでした!大手通信会社の皆様、ご連絡をお待ちしております!
彼らは30代で、落ち着きもあり、とてもオープンな性格で、
初対面にも関わらず、本当によくしてもらいました。
彼らのグローバル展開が成功するように今後も応援したいと思います!
SIM一枚で世界を渡る!クラウドSIMの”Comfortway”
近年は海外旅行の際でも、現地で携帯やスマートフォンを利用できるサービスが増え、
非常に便利になりました。
大手キャリアの海外パケットし放題や、レンタルポケットWifi、現地SIMカードの購入など、様々な方法があります。
便利になった反面、海外に行った際、ついデータローミングの設定変更を忘れてしまった事はありませんか?ひどい時には帰国後に高額な請求がくることも。。。
日本では最近、 「海外ローミング放題SIM」というチャット機能だけに制限した海外渡航者向けSIMカードが発表されました。
サービス紹介 - 海外ローミング放題SIM - 留学・旅行で大活躍の海外SIM
今回ご紹介する ロシア発のスタートアップ”Comfortway”は、全く別のアプローチで、
この携帯電話・スマートフォンの海外利用という市場に切り込んでいます。
もうローミングは必要ない?
SIM一枚で世界を渡る
"Comfortway"
Comfortwayは国内でも海外でも一枚のSIMカードだけで、スピーディーに
現地の通信回線に接続し、格安通信を可能にするサービスを提供しています。
利用方法はいたって簡単です。
- ComfortwayのSIMカード(CwSim)を購入します。
- App storeやGoogle playからアプリをダウンロードします。
- アプリ上で現地の通信会社と料金体系を選択して、利用することができます。
SIMカード自体は、990ルーブルで、届いた時点で5ユーロ分が利用可能になっています。
現在、利用可能国は140以上です。
料金体系は、国とパケット量によって異なりますが、主要国は以下の通りです。
【アメリカ】
100MB - 2€、200MB - 4€、500MB - 10€、1024MB - 20€
【フランス】
100MB - 2€、200MB - 4€、500MB - 10€、1024MB - 8€
【日本】
100MB - 34€
ちなみに、
ソフトバンクの海外パケットし放題が、0~1,980円/日、25Mバイト以上なら2,980円/日。
「海外ローミング放題SIM」がチャット利用だけで4,000円/年間。
【ロシア】
100MB - 2€、1024MB - 5€
ちなみに、
ロシアの大手通信会社が、300〜2,000ルーブル/月(約4.7€〜31€)
バーチャルSIMテクノロジー
ComfortwayがどうしてSIM一枚で世界中の回線に接続でき、かつ、
ローミングを必要としないかというと、”バーチャルSIM”という製品を
彼らが開発したからです。
ここにはRSP(Remote SIM Provisioning)という技術が活用されています。
この技術は、2014年のGSMA(携帯電話システムの標準化や技術開発を目的とした
業界団体)によるカンファレンスで発表され、2016年に正式に標準化されました。
この技術によって利用者は自分の端末から、SIMカードの書換えを行うことができるようになりました。
Comfortwayは渡航先でアプリを通して、自らSIMカードの情報を書換え、
通信事業者と料金体系を選択するという仕組みをサービス提供しています。
Comfortwayが創業したのは、2012年です。創業者のアレッグ・プラブディン(Олег Правдин)は当時、旅行者向けの3GWifiルーターの提供をしていました。
2015年にФРИИ(Internet Initiatives Development Fund:ロシア最大のインキュベーター)のアクセラレータプログラムに参加し、80万ルーブルの出資と60万ルーブル相当の、
エキスパート支援を受けています(7%の株式と引き換え)。
同2015年からSkolkovoに入居し、2016年、欧州の通信会社から
総額600万€の増資を受けました。
今回の増資によって得た資金は利用可能範囲を広げていくことに使用される予定です。
すでに日本でも利用可能なので、次回日本に帰国する時には、
利用してみたいと思います。
Comfortwayの開発はニージニー・ノブゴロドで行われています。
オフィスを見に行けるということなので、その記事は次回の
「ニージニー・ノブゴロド特集」で書きたいと思います!
参照記事→